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日韓だけが見ない中国サッカーリーグ

タグホイヤーから青島ビールまで…リーグ優勝賞金は驚愕の70億円! Jリーグも完敗の中国サッカー

世界中に広がる華僑も熱烈応援!

 ただ、中国スーパーリーグの“非効率的なお金の宴”は、今後少なくとも5年は続く可能性が大きい。すでに、中国国内選手たちの年俸や移籍金も高騰しおり、すぐに「正常」に戻すには時間がかかる。中国は1年のうちに自国選手であってもチームに5人しか連れて来ることができないルールがあるため、中国人選手の移籍金も非常に高くならざるを得ないという背景がある。同国のサッカーカルチャーや業界は非常に活性化しているが、選手を育てる速度がそれに対応できていないのが現状だ。結果的に、良い選手、中でも若い選手たちの“身代”はとても高価になるしかない。そのような需要と供給の不均衡が解決しない限り、「異常」は解決されないはずだ。

 さらに中国は、サッカー協会という枠組みを超え、政府レベルでスポーツ産業を振興しようという計画を持ち合わせている。中国の産業振興は、日本や韓国など資本主義国家とは異なり国のテコ入れがすさまじい。中国政府は2050年までにスポーツ産業の規模を大幅にはぐくむよう公式な計画を発表しているが、その中でサッカーが占める産業規模の割合は実に60%を超える。人知れず“それなりの計画”を“それなりの方法”で推し進めているのだ。

 そのような文脈では、中国スーパーリーグはお金の力で引き続き発展する可能性がある。リーグの発展は、サッカーのレベルと大きく関連しない。タイ、インドネシア、ベトナムのようにサッカーのレベルが比較的低い国でもプロリーグの人気は高い。そして今、中国市場は全世界の資本が集まる場所となった。しかも、中国市場は非常に成功しにくいところでもある。中国人が好きなサッカーを通じて、自社のイメージを変えようとする試みは一朝一夕では叶わない。企業は多額の金額を市場に投じるしかないのだ。

 そういう意味で、ナイキ、DHL、TAG Heuerのような多国籍企業も手をこまねいているわけではない。彼らは中国スーパーリーグと引き続き縁を保ち続けている。中国スーパーリーグはそれ自体、活用度が非常に高く、現在では、欧州でも中国スーパーリーグの中継を難なく見ることができる。また、全世界で中国人脈、また中国社会との関係を維持している“華僑”へのアプローチ手段にもなる。彼らは中国に関連したコンテンツを熱狂的に消費している。サッカーもそんな主要なコンテンツのひとつとなった。

 中国スーパーリーグという存在はとても不可思議だ。外部から見ると“異常”な部分が多い。取材をしてみても、理解できないことが多いのだ。それでも、我々が想像もできない方法で成長を遂げてきたのも事実である。今では、中国政府も注目するビッグコンテンツ。中国スーパーリーグがどんな道を歩んでいくか予想することは難しいが、ひとつだけ明らかなのは、どんな形であれ、今後も成長を続けていく、ということだ。


リュ・チョン(Chung Ryu)

サッカー専門誌「スポータルコリア」、英国雑誌「フォーフォーツー」のエディターを経て、2013年よりサッカー専門メディア「フットボリスタ」の取材チーム長として活躍。2017年からは中国および中国サッカーに関する記事を韓国最大ニュースポータル「NAVER」に寄稿。サッカー・旅行に関する書籍を多数執筆。

世界のタレントが中国に!

 中国スーパーリーグでは、数多くの世界的プレイヤーが活躍している。例えば、ブラジルの有名選手であるフッキことジヴァニウド・ヴィエイラ・ジ・ソウザや、オスカル・ドス・サントス・エンボアバ・ジュニオールが所属するのは上海上港だ。

 パウリーニョことジョゼ・パウロ・ベセーラ・マシエル・ジュニオール、タリスカことアンデルソン・ソウザ・コンセイソンは広州恒大に所属。広州は香港の北西部に位置する中国第三の都市である。テクノロジー都市・深センや観光地・マカオにも近く、広東料理が味わえる地域だ。サッカー観戦だけでなく、現代中国の動向や文化を知る上では欠かせない土地である。

 同じくブラジル代表のレナト・アウグストは、北京国安に所属している。一方、アレックス・テイシェイラ、本文に登場するラミレス、エデル・チタディン・マルティンス、元伊代表のガブリエル・パレッタは江蘇蘇寧に所属。現地に行けばそのプレイを直接拝むことができるかもしれない。江蘇省には東洋のベニスと冠される「山塘街」もある。中国にサッカーを見にいくならオススメの地域のひとつだ。

 また伊代表のグラツィアーノ・ペッレ、ベルギー現役代表のマルアン・フェライニは山東魯能に所属している。山東省はビールで有名な青島が人気の観光スポットとなっている。それ以外にも中国スーパーリーグでは、独代表だったザンドロ・ヴァーグナー(天津泰達)、ムサ・デンベレ(広州富力)、ヤニック・フェレイラ・カラスコ(大連一方)も中国大陸を闊歩している。アルゼンチン代表のエセキエル・ラベッシとハビエル・マスチェラーノは河北華夏幸福で大活躍だ。天津、河北、大連は、ともに北京から近い。少し長めの休暇を取れるのであれば、各選手を観戦しながら周遊することもできるかもしれない。

 なお、フッキ(2016年)やオスカル(2017年)が中国リーグに移籍した際、メディアからは「金を稼いですぐに去るだろう」という予測がすう勢だった。しかし、彼らは3年以上も上海上港に在籍している。パウリーニョは広州恒大でプレイした後、FCバルセロナに移籍。再び広州に戻ってきている。

 監督の面々も豪華だ。バロンドールを受賞したファビオ・カンナヴァーロ監督は広州恒大を率いており、独出身の戦術家ロジャー・シュミットは、北京国安を指揮している。韓国代表が望んでいたスペインの名匠キケ・サンチェス・フローレスは、上海申花の監督を務めているし、故ヨハン・クライフの息子であるジョルディ・クライフは重慶当代力帆の指揮を任されている。韓国代表監督だったウリ・シュティーリケは、今や天津泰達の監督だ。中国旅行を楽しみながら世界レベルのサッカーを楽しめる。サッカーファンにとって、そんなぜいたくな時代が訪れている。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)

最終更新:2019/10/21 12:12
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