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新型コロナ生物兵器説に踊らされないために…陸自特殊武器専門家が解説する「生物兵器の常識」

過去には生物兵器が工場から漏れ出した事故も?

 新型コロナウイルスは19年12月、中国・湖北省武漢市で「原因不明のウイルス性肺炎」として症例が確認された以降、周辺国の韓国や日本のみならず、世界中で感染が確認されているのは周知の事実だ。

「生物兵器の使用が想定されるのは、ある地域に存在する敵を無力化して、その後に地域を占領することですが、進出した部隊が生物兵器の被害にあっては元も子もありません。ですから、生物兵器として使用される細菌またはウイルスは、既にワクチンなどが開発されており解毒が可能なもの、あるいは遺伝子操作を施して時限的に死滅するものに限られます。

 さらに言えば、新型コロナウイルス感染症は、既往症を持つ高齢者や病人を含めも5%程度です。この程度の“破壊力”では、兵器としてはまったくの役不足。

 ヒトからヒトに感染しない、致死率90%以上、抗生物質の治療が有効と生物兵器としての前提条件を具備している炭疽菌と比べれば、新型コロナウイルスが生物兵器として開発された可能性が極めて小さいことが分かると思います」(同)

 しかし、中国の話ではないが、過去には生物兵器が工場から漏れ出した事故も起きている。

 79年に旧ソ連・スベルドロフスクの生物兵器工場から炭疽菌が漏れ出し、周辺住民が死亡する事故が起こったが、冷戦当時の旧ソ連でこの事故が報じられることはなかった。また、昨年9月にはロシア内陸部のコルツォヴォに所在する旧ソ連の生物兵器貯蔵施設「ベクター研究所」で爆発事故があり、エボラや天然痘が漏れ出した可能性が指摘されているが、ロシア政府はその事実を一切認めていない。

「現在、一部の国で行われている生物兵器の貯蔵や研究は、使用を前提としているのではなく、予防や対処を目的としています。オウム真理教(当時)のようなカルト集団や国際テロ組織が実際に炭疽菌を使ったテロを起こしていますので、未知の細菌やウイルスを使ったテロに備えるためと解釈できます。

 75年に発効した生物兵器禁止条約を待つまでもなく、生物兵器は近代以降の戦争で国家により使用されたことはありません。国家が生物兵器を使用しない理由は諸説ありますが、軍事的には兵器としての威力が乏しいこと、政治的にはヒトが本能的に恐れる感染症を軍事に用いることで “人倫にもとる”と未来永劫に非難されるからであると言われています」(同)

 陸自の特殊武器専門家は、生物兵器の“常識”を前提に新型コロナウイルス生物兵器説をほぼ否定した。中国が欠陥兵器を作り出した可能性はゼロとは言えないまでも、その可能性は小さいと言えるのではないか。

 いま私たちに求められるのは、トンデモニュースに惑わされることなく、客観的な情報を咀嚼するリテラシーだろう。

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最終更新:2020/03/19 12:12
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