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ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」番外編

医療ドラマは『恋つづ』の独り勝ち? 良作ぞろいの1月期ドラマを辛口総括!

『テセウスの船』の残念ポイントは?

『テセウスの船』(TBS系)

 医療モノが多かった地上波プライムタイムのドラマだが、ラブコメ色の強い『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)以外は積極的に見たいとは思えず、ほとんどが途中離脱した。地上波のドラマは全体的に企画が保守化しており、見ていて苦しい。

 そんな中『恋つづ』以外では、『テセウスの船』(同 )と『知らなくていいコト』(日本テレビ系 )は考察ドラマのテイストを持ち込むことで奮闘したといえるが、最終回まで見終わって感じたのは徒労感だけだった。

 大映ドラマ的なツッコミを誘発しながら多くの謎を振りまいて最後まで強引に引っ張ろうとした『テセウスの船』に関しては、そもそもそういうドラマだと途中からあきらめていたのであまり失望感はないのだが、演出に関しては原作漫画のシリアスな空気が好きだったので、日曜劇場的な泥臭いものではなく、コーエン兄弟の映画『ファーゴ』のようなトーンで描いてほしかったと不満である。

 対して『知らなくていいコト』は新聞記者の真壁ケイト(吉高由里子)が主人公の物語で、翻訳家の母親の死をきっかけに自分が殺人犯の子どもなのではないかという疑問を持つところから始まる導入部がうまく、考察ドラマとしてはこちらのほうが面白くなるのではないかと期待した。大石静の脚本は実に巧みで、カメラマン・尾高由一郎(柄本佑)との不倫恋愛の見せ方や、マスコミ報道の問題に切り込もうとした姿勢は悪くなかったのだが、ヒロインの元カレ・野中春樹(重岡大毅)の扱いが強引で、それが物語のバランスを壊してしまったように感じた。数少ない作家性の強いオリジナルドラマで、部分的には面白かっただけに、終わり方が残念だ。

 評価が難しいのが、Netflixで配信された蜷川実花が全話を監督した『Followers』だ。本作は蜷川自身を思わせるカメラマン・奈良リミ(中谷美紀)と、女優志望の百田なつめ(池田エライザ)を中心とした、東京で生きる世代の違う女たちの群像劇。

 蜷川が監督した映画『ヘルタースケルター』のテイストをドラマに落とし込んだような作品だが、赤を基調としたド派手なビジュアルはともかく、オシャレな東京のアイコンとして打ち出されるカルチャーネタがことごとく恥ずかしい。

 外国人の頭の中にしかないバーチャルな東京を日本人が模倣しているような倒錯した作品で、国産Netflixドラマの方向性はこれでいいのだろうか? と頭を抱えてしまった。

とはいえ、莫大な制作費かかっているのは確かなので、ゴージャスなものが見たい人にはお勧めだ。

成馬零一(ライター/ドラマ評論家)

1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。ライター、ドラマ評論家。主な著作に『キャラクタードラマの誕生 テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)、『テレビドラマクロニクル 1990→2020』(PLANETS)などがある。

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Twitter:@nariyamada

なりまれいいち

最終更新:2023/02/27 19:54
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