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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.592

“リアル筋肉マン”ドンソク主演作『悪人伝』ほか…非イケメンたちが活躍する韓国映画のコク深さ

日本の俳優が失ってしまった人間臭さ

ヤクザのボスとしてのメンツを潰されたドンス(マ・ドンソク)は、自分を襲った殺人鬼を執拗に追い詰める。

 ヤクザのボスと暴力刑事とのバディムービーという安直な展開にはならないところが、本作の面白さだ。ドンスは連続殺人鬼が世間を騒がせていることに便乗して、敵対するヤクザの組長を殺人鬼の仕業に見せかけて血祭りにするなど抜け目がない。まさに悪人である。ヤクザならではの情報網と子分たちの追い込みも、韓国警察にはないものだった。そして追い詰めた殺人鬼に対し、ドンスは裏社会ならではのケジメをつけさせようとする。全身タトゥーだらけのドンスが殺人鬼を裁くクライマックスは、まるでハードコア版『遠山の金さん』のような面白みがある。

 徹底的に面白さを追求する韓国映画らしさが、『悪人伝』には溢れている。監督の作家性やメッセージ性は二の次、まずは映画館にやってきた観客たちを存分に楽しませようという姿勢が心地よい。ちなみに韓国では映画館の入場料が700円~1000円程度で、庶民の財布にも優しい価格となっている。

「マブリー」の愛称で親しまれているマ・ドンソクは、『悪人伝』で稀代の悪役をとても魅力的に演じてみせる。イケメンではないが、独特な人間臭さは日本のいまどきの俳優にはないものだろう。同じようにイケメンではないが、韓国映画『マルモイ ことばあつめ』に主演しているユ・ヘジンも実に味わい深いルックスの俳優として印象に残る。

 すでに日本でも公開中の『マルモイ』は、韓国版『舟を編む』(13)と称したい作品。朝鮮語の辞書を編纂することに情熱を燃やす朝鮮語学会の代表・ジョンファン(ユン・ゲサン)と彼に協力する人々の物語だ。三浦しをん原作小説を石井裕也監督が映画化した『舟を編む』はダシをきかせた薄口仕立てだったが、同じ辞書づくりでも韓国映画となると血湧き肉躍るエンタメ作品になってしまう。日本統治時代に実際に起きた「朝鮮語学会事件」を題材に、アクションあり、ビンボー一家の号泣ドラマありの喜怒哀楽すべての要素が盛り込まれた物語となっている。『タクシー運転手 約束は海を越えて』(17)の脚本家オム・ユナが、自身の監督デビュー作として全力を注いでいる。

 韓国映画の長所として、自国語の辞書の編纂という固いテーマを扱いながらも、決してインテリ目線の物語にはしない点が挙げられる。『マルモイ』の主人公であるパンス(ユ・ヘジン)は日本語はおろか、ハングルの読み書きもできない。映画館のもぎりをしながら、平気で置き引きし、映画館内にスリを招き入れる小悪党・パンスの立場から物語が進んでいく。

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