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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.594

上映時間8時間半のドキュメンタリー『死霊魂』中国共産党“飢餓収容所”サバイバーたちの証言

サバイバーたちが語りたがらなかった収容所の内情

第三部では、インタビュアーを務めるワン・ビン監督もカメラの前に出ることに。実直な人柄が感じられる。

 収容所での過酷な日々も、強い信念で貫いた語るジョウ・ホイナン。だが、きれいごとだけでは収容所は生き延びれなかったことを、続いて登場する彼の弟、ジョウ・ジーナンが語る。建築技師として優秀だったジョウ・ジーナンだが、彼もまた右派扱いされ、収容所に送られる。激しい飢饉に見舞われるが、彼は真面目な性格が認められ、羊番になれたことで命拾いした。放牧を任されていた羊番は、食事量が多かった。兄のジョウ・ホイナンは小隊長だったので、他の収容者よりも多く食べることができたと小さく笑いながら打ち明ける。ジョウ兄弟のように食べ物に恵まれた者か、炊事係しか生き延びることはできなかった。

 では、羊番や炊事係などに就けなかった被収容者たちは、どうやって飢えに耐えたのか。同じく第一部に登場するチー・ルージーのコメントは衝撃的だ。亡くなった人は埋葬される際にお腹を裂かれ、内臓を取り出され、焼いて食べられたのだという。収容所のある夾辺溝は厳寒地で、穀類は育たず、人肉食でしか生き延びることはできなかった。

 夾辺溝の収容所送りとなった3200人のうち、生還者はわずか500人ほどだった。1970年代に入ってから名誉回復することができたものの、つらい過去を思い出したくない人も少なくなかったはずだ。ワン・ビン監督はスカイプインタビューで以下のように語った。

「収容所のできごとを、僕はずっと知らずにいました。2004年2月、僕はヤン・シエンホイさんの小説『告別夾辺溝』(劇映画『無言歌』の原作)を読み、驚きました。これはどうしても映画にしなくてはいけないと思ったんです。『無言歌』を撮る際にリサーチとして、2005年から生存者の方たちに話を聞き始めました。もちろん、取材を受けたくないと拒否する人も、10人ほどいました。話してもいいけど、絶対に口外しないでくれという人もいました。取材を嫌う気持ちは、すごく理解できます。でも、生存者のほとんどがカメラの前で語ってくれました。それはとても勇気のいることだったと思います」

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