日刊サイゾー トップ > 連載・コラム > パンドラ映画館  > 8時間半ドキュメント『死霊魂』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.594

上映時間8時間半のドキュメンタリー『死霊魂』中国共産党“飢餓収容所”サバイバーたちの証言

文=長野辰次(ながの・たつじ)

収容所生還者たちの肉声を記録した『死霊魂』。各職場の5%が反体制派として、収容所送りとなった。

 街や職場をよりよくするための意見を、みんな率直に語ってほしい。毛沢東主席時代の中華人民共和国では、理想の国づくりのための「百家争鳴」キャンペーンが行なわれた。中国共産党への批判も含む自由な発言が認められていたが、周囲に勧められて発言した者には過酷な運命が待っていた。1956年に中国共産党が始めた「百家争鳴」キャンペーンは、翌年になって方向転換。発言者たちは反体制派=右派として弾圧され、再教育収容所送りとなった。

 さらに毛沢東の無謀な農業政策が原因で、中国史上最大の飢饉が発生。収容所送りとなった人々は、1日わずか250gの雑穀しか与えられず、次々と餓死する。上映時間8時間26分となるドキュメンタリー映画『死霊魂』は、特に厳しい環境にあったゴビ砂漠の夾辺溝収容所サバイバーたちの肉声を集めた慟哭の映像記録となっている。

 本作を12年がかりで撮り上げたのは、1967年中国西安市生まれのワン・ビン(王兵)監督。上映時間9時間をこえるデビュー作『鉄西区』(03)は、山形国際ドキュメンタリー映画祭大賞を受賞。その後も、中国の地域格差の実情を映し出した『三姉妹 雲南の子』(12)、精神病院の中にカメラを入れた『収容病棟』(13)、出稼ぎ労働者たちの厳しい暮らしを追った『苦い銭』(16)などの問題作を海外で公開している。

 ドキュメンタリー映画を撮り続けているワン・ビン監督だが、過去に一度だけ劇映画を撮っている。「百家争鳴」後に収容所送りになった人々の悲惨な収容生活をドラマ化した『無言歌』(10)だ。再現された収容所は、荒地に掘られた穴蔵同然の粗末な施設だった。また、夫と引き離された妻側の視点から描いたドキュメンタリー映画『鳳鳴 中国の記憶』(07)も撮っている。収容所送りとなった本人だけでなく、家族も辛酸を舐め続けなくてはならなかった。経済大国となった中国の暗い過去に、当時まだ生まれていなかったワン・ビン監督は強くこだわっていることが分かる。

 第一部の最初に登場するのは、85歳になるジョウ・ホイナン。もともとは国民党の軍人だったが、共産党員として再教育を受けてからは、人民解放軍で精力的に働き、その後は地方の国有企業に勤めていた。「百家争鳴」の際に職場の改善案を提案するが、このことから反体制派に認定されてしまう。実直な性格と発言が、災いを招いてしまった。

 ジョウ・ホイナンが語る、反体制派の摘発方法が実にえげつない。毛沢東は全人口の5%が統計的に「右派」になると考え、各職場から職員の5%を右派としてリスト化することを命じた。人数合わせのために、まったく身に覚えのない人も「右派」扱いされてしまった。革命を成し遂げた偉人・毛沢東の政治家としての暗黒面が明かされる。

123

上映時間8時間半のドキュメンタリー『死霊魂』中国共産党“飢餓収容所”サバイバーたちの証言のページです。日刊サイゾー芸能最新情報のほか、ジャニーズ/AKB48/アイドル/タレント/お笑い芸人のゴシップや芸能界の裏話・噂をお届けします。その他スポーツニュース、サブカルチャーネタ、連載コラムドラマレビューインタビュー中韓など社会系の話題も充実。芸能人のニュースまとめなら日刊サイゾーへ!

ページ上部へ戻る

絶対的満足度の至宝店すべて見る

人気連載すべて見る

元木昌彦の『週刊誌スクープ大賞』

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"元木昌彦による週刊誌レビュー

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士、かく語りき

“キング・オブ・アウトロー”瓜田純士の最新情報をお届け! 嫁・麗子も時々登場。

テレビウォッチャー・飲用てれびの『テレビ日記』

テレビの気になる発言から、世相を斬る!

じゃまおくんのWEB漫クエスト

マンガレビューブログ管理人じゃまおくんが、インターネットに埋もれる一押しマンガを発掘!

腹筋王子カツオ『サイゾー筋トレ部』

“腹筋インストラクター”腹筋王子カツオさんが、自宅でも簡単にできるエクササイズを紹介!

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ
イチオシ企画

【PR】DYM・水谷佑毅社長の野望とは?

医師免許を持つ、ベンチャー経営者の異色の半生!
写真
特集

NEWS手越祐也、崖っぷち!

相次ぐスキャンダルに滝沢激怒、ジャニーズ退所も現実味!?
写真
人気連載

麒麟・川島の塩と手榴弾

 テレビウォッチャーの飲用てれびさんが、先週...…
写真
インタビュー

YENTOWNの軌跡(前編)

 YENTOWNが2020年で結成5年目を迎えた。東京を拠点に結成されたこのヒップホ...
写真