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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.596

家族より小さな社会単位としてのバディムービー 愛すべき相棒『ブックスマート』『ジェクシー』

世相を反映するバディムービー

「ハングオーバー!」チームの新作『ジェクシー! スマホを変えただけなのに』。スマホが相棒役に。

 と、ここまでは自己啓発セミナーのステマ広告みたいな内容の『ジェクシー!』だが、フィルの努力が実って、ケイトをデートに誘い出したことから雲行きが怪しくなっていく。それまでフィルに対して常に上から目線だったジェクシーが、ケイトに対して嫉妬の炎をメラメラと燃やし始める。フィルの個人情報のすべてを知るジェクシーだけに、怒らせると大変なことに。人工知能の暴走という、サイエンスホラーな展開が後半には待ち受けている。

 これまでに『テッド』(12)では口の悪いテディベアが、『スイス・アーミー・マン』(16)では水死体(ダニエル・ラドクリフ)が、『バンブルビー』(18)ではポンコツの中古車が主人公の「相棒」を務めてきたが、『ジェクシー!』ではついにスマホが相棒となった。トニー・カーチスとシドニー・ポワチエが共演した『手錠のままの脱獄』(58)以降、『レッドブル』(88)や『ラッシュアワー』(98)など、バディムービーは米国社会の世相を反映した作品が多いようだ。

 恋人がいなくても、職場での昇進の見込みがなくても、ジョークを飛ばしあえる相棒がいれば、そこそこ幸せ。家族制度も地域コミュニティーも機能しなくなった現代社会において、バディムービーはよりミニマムな社会単位を描いたドラマなのかもしれない。『ブックスマート』と『ジェクシー!』を観ると、バディムービーも新時代を迎えたことを感じさせる。

『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』
製作総指揮/ウィル・フェレル、アダム・マッケイ 監督/オリヴィア・ワイルド
出演/ケイトリン・デヴァー、ビーニー・フェルドスタイン
配給/ロングライド 8月21日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国公開
(c)2019 ANNAPURNA PICTURES,LLC.All Rights Reserved.
https://longride.jp/booksmart/

 

『ジェクシー! スマホを変えただけなのに』
監督・脚本/ジョン・ルーカス、スコット・ムーア 
出演/アダム・デイヴァイン、アレクサンドラ・シップ、マイケル・ペーニャ、ローズ・バーン(声) 配給/ショウゲート PG12 8月14日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
(c)2019 CBS Films Inc.All Rights Reserved.
http://jexi-movie.com

最終更新:2020/08/14 11:52
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