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異論!暴論! Kダブシャインが語るトランプ論Part3「ヒップホップ的視点で考察するトランプ」

本当に必要とされているのはブラックコミュニティの自立

 そもそも共和党は南北戦争における人種差別を廃止するために誕生した党で、南北戦争自体、共和党対民主党の内戦だった。そういえば、そんなことも歴史の授業で見聞きしたことはあったけど、現代の黒人たちはジェシー・ジャクソンやオバマ前大統領などがいる現在の民主党を黒人の味方と見る”固定観念”が根付いてしまっているんだよ。アメリカ史を振り返ると、すっかり人権派だと意識していた民主党のほうが、過去には差別的で戦争にも積極的(日本への原爆投下)だし、60年代以降、共和党と民主党のイメージが反対になって、それが長い時間をかけて世の中に広まっていったんだ。

 でも、アメリカの黒人らが「Make America Great Again(MAGA)」と言われて、「また奴隷制度が始まるんじゃないか。冗談じゃない。共感なんかできるわけがない」という気持ちも理解できる。ただ、成功できない黒人たちの温床は、白人から差別を受けていることよりも、今の黒人コミュニティ内における父親の不在が70%を占める家族形態や、文盲率の高い教育事情に長年の問題がある。

 ブラック・ライヴズ・マターにおいて「黒人が生きる上でうまくいかないのは構造上のもので、すべて白人のせいだ!」という一部の抗議も、結局のところ本当に必要としているブラックコミュニティの自立を促してるとは感じられない。もともとは「黒人が両手を挙げて、丸腰の銃を持っていない無防備な状態」というアピールのために行進するブラック・ライヴズ・マター運動が、いつしか街中に火炎瓶を投げつけ建物を破壊したり、国旗を燃やし、歴史的な銅像を引き倒す破壊行為にまで及んでいる。まるで暴力革命だ。

 黒人たちの中には純粋に抗議をしたいだけなのに、過激左派のアンティファ(反ファシスト)が後ろからブラック・ライヴズ・マターに余計な主張を持ち込んできている。つまり、黒人の人権や名誉を保つための運動だったものに、社会主義やマルキシズムにハマってる面々が、この運動の大義名分を利用して暴れて、もはや死者まで出す運動になっている。それで、そこにいるミレニアル世代は「資本主義が我々を苦しめている! すべてはアメリカという国のせいだ!」という気持ちから反米思想になっていく。黒人は怒りと恨みの中だけで生きてきたわけじゃないし、アフリカン・アメリカンでもあるけど、同時に“アメリカン”でもあるわけで、「アメリカという国において、黒人や白人でもあるけど、その前にわれわれはアメリカ人なんだ。だからこそ平等に扱ってほしい」という考えがブラック・ライヴズ・マターの根底であるはずなのに、破壊行為的な暴動となってしまってるんだよ。

 その上で「この国では、いくらがんばったところで白人がいる限り、何をやったとしてもうまくいかない」という悲観的な考えから、もう白人の味方も大勢いるのだから、「自分たちが今よりも努力すれば、きっと夢は叶う」というマインドセットにできだけ変えるべきで、「いつまでも哀れまれたり、慰められたりしていても、それだけでは自分たちの状況は改善しない」という反対派の訴えを聞くと、やはり彼らのためにもその考えの方を応援しなければと思わされるんだ。

Kダブシャイン
1968年、東京都生まれ。95年にキングギドラとしてデビュー。97年にソロ作『現在時刻』を発表。政治批判や社会問題などを積極的に取り上げ、唯一無二のMCとして知られている。
Twitter〈@kingkottakromac〉Instagram〈@kw5hine

最終更新:2020/11/02 22:00
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