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うつ病やPTSDに効く? LSD、MDMA、キノコ……医学的研究が進む幻覚剤の最先端

最新の科学を踏まえて“伝統的”な使用法に回帰

 現時点ではそのような段階であるが、将来的には日本も含めた世界各国の薬局や通販で気軽に幻覚剤が買えるようになるのか――。おそらく、そうはならない。サイケデリクスの効果的な使用には、いわゆるセットとセッティング(使用者の心を整える+快適な環境を用意する)が決定的に重要だからである。医療目的の場合には、医師やセラピストが薬を用意し、同伴した環境でのみの利用が許されるようになるはずだ。ケシを原料とするモルヒネが医療現場で痛みの緩和に使われるのと同様、管理されたものになる。

 思えば、天然の幻覚剤であるマジックマッシュルームやアヤワスカは、古来より人々から聖なるものとされ、シャーマンがセットとセッティングを準備した上で儀式に用いられてきた。それを西洋人が20世紀半ば以降に奪取し、現地の人々が長年にわたって経験的に培った適切な用法を無視することで事故が多発した。化学的に精製されるLSDやMDMAも含め、21世紀のサイケデリクス・ルネサンスでは、もう一度かつてのような限定的な使用に回帰する――最新の脳科学や精神医療の知見を踏まえた上で、アルカイックなスタイルに接近することになる。

 こうした状況に対して、サイケデリクスがアカデミズムや西洋医学に絡め取られてつまらないと思うか、真摯に科学的な研究や治療効果を期待するかは人それぞれだろうが、現状はそんなところだ。

(文/飯田一史)
※「月刊サイゾー」12月号ドラッグ特集より一部転載。完全版はコチラ

※参考文献(本文で言及したものは除く)
マーティン・A・リー、ブルース・シュレイン『アシッド・ドリームズ』(第三書館)
ジョン・マルコフ『パソコン創世「第3の神話」 カウンターカルチャーが育んだ夢』(NTT出版)
「ビジネスインサイダー」米国版17年3月10日付「7 myths about psychedelic drugs like LSD that are doing more harm than good」
「ネイチャー」ウェブ版17年4月19日「Increased spontaneous MEG signal diversity for psychoactive doses of ketamine, LSD and psilocybin」
「ニューヨーカー」ウェブ版15年2月9日付「The Trip Treatment」
「サイエンティフィック・アメリカン」ウェブ版20年7月12日付「The Power of Psychedelics」

マーケティング的視点と批評的観点からウェブカルチャーや出版産業、子どもの本について取材&調査して解説・分析。単著『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)など。「Yahoo!個人」「リアルサウンドブック」「現代ビジネス」「新文化」などに寄稿。単行本の聞き書き構成やコンサル業も。

いいだいちし

最終更新:2021/01/23 13:00
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