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米国で月間1000万人が使っているスマートニュースの「恐るべき現地調査」

文=後藤直義

──あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界でさまざまなテクノロジーが生み出され、デジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか……。(「月刊サイゾー」12月号より転載)

米国で月間1000万人が使っているスマートニュースの「恐るべき現地調査」の画像1
スマートニュース公式サイトより

「暴動で丸焼けになった、中古車ディーラーのクルマが並んでいます。まるで、ここは戦場です」

 米国のケノーシャ(ウィスコンシン州)。今年8月下旬、黒人男性が白人の警察官に背後から銃で7発を撃たれたことがきっかけで、BLM(ブラック・ライブズ・マター)の抗議運動が起きて、一部が暴徒化した。さらに17歳の白人少年によるライフル銃の乱射事件が発生。合計2名が亡くなり、1人が重傷を負うという惨劇まで起きているエリアだ。日本人の観光客はおろか、一般的な米国人ですら近づきたくない──。2020年10月末、そんな街に入り込んで視察をしていたのは、多くの日本人が知ってるであろう、ニュースアプリ「スマートニュース」の創業者、鈴木健氏だ。

 まだ生々しい傷痕が残る街を歩き回り、事件当時のことを近隣の人々に教えてもらい、地元のコミュニティに入ってゆく。そして時間があれば、まるでジャーナリストのように、SNS上で動画による現場中継もする。

「この街は、まさに分断している米国社会を象徴している場所に感じますね」

 筆者と電話でやりとりしていた鈴木氏によれば、このままトランプ大統領の是非を問うことになる選挙当日(11月3日)も滞在し続けて、米国で暮らす3.5億人のリアルライフを見て回るという。多くの人は、なぜスマートニュースの創業者が、コロナの感染拡大も収まっていない米国をウロウロしているのかと、訝しく思うに違いない。またスタートアップとはいえ、今では国内外に350人の従業員を抱え、時価総額は1200億円を超える、日本を代表するユニコーン企業のひとつでもある。その創業者CEOである鈴木氏が、そんな調査旅行を繰り返すとなれば、一般的なビジネスパーソンの感覚では正気に思えないだろう。

 しかし、スマートニュースは米国市場で1000万人の月間ユーザーを抱える、日本発のスタートアップに化けているのだ。とりわけ20年に入ってから、2倍以上の急成長を見せている急成長アプリでもある。フェイスブックを1億人以上が使っている米国において、国民的アプリとはいえないが、それでもニュースアプリとしてはトップレベルの地位を築きつつある。これは日本のユーザーには、ほとんど知られていない事実だ。そして鈴木氏の米国での調査旅行と、米国市場でのアプリの急成長が、一本の線でつながっている事実はもっと知られていない。

スマホの代わりに「iPod touch」の実情

「ニューヨークや、サンフランシスコは米国じゃない。本当に米国を知りたいなら、まずは米国南部だろう。それも最低、2週間はかかる」

 16年、スマートニュースの米国事業は、ある種の伸び悩みに直面していた。最初の100万人のユーザーはトントン拍子で増えていったが、それ以降がなかなか広がらない。

「自分は、米国を知らないのではないか」

 そう考えた鈴木氏が、米国拠点のスタッフに相談したところ、日本人がほとんど行くこともなければ、知ることもない、ディープな米国の調査旅行をするというアイデアが生まれた。そこで16年から17年にかけて、合計で4回、全米25州を走り回っては、その土地々々にあるコーヒーショップで、現地の人がどのようにスマホを使っているのか、根掘り葉掘り聞きまくるインタビューをした。たとえば、ジャズで有名なニューオリンズ(ルイジアナ州)の一角。調査旅行に同行したスマートニュースの幹部によれば、そこにはスマートフォンの代わりに、iPod touchを使っている人たちの存在に驚いたという。

「お金がないので、中古のiPod touchや安物のタブレットを持って、スターバックスの無料Wi-Fiでネットにつなげてるんです」(同社、ヴィンセント・チャン氏)

 ニューヨークのビジネスエリートだけが、米国人じゃないということだ。朝食は2ドル(約210円)、物価も極めて安く、大都市の半分以下だ。マイアミ(フロリダ州)では、選挙の投票所の近くに流れる、爆音のサンバミュージックにまずは驚いた。そして、地元のマルコ・ルビオ議員(共和党)の演説に耳を傾けた。同氏の両親はキューバ移民であり、いわばヒスパニック(スペイン語圏、南米出身者)の政治家だ。日本人からするとヒスパニックは一緒に見えても、彼らは多様なバックグランドをもっている。キューバ系は、キューバ危機時代に社会主義国から亡命しており、共和党のトランプ派。しかし、その他のヒスパニックは、どちらかというと移民にオープンな民主党派といった塩梅だ。

「だからマルコ・ルビオ議員は、5つ、6つもの異なる言語で、挨拶のスピーチをしていました。ヒスパニックも一枚岩じゃなく、多くの支援を取り付けるため、非常に細かいケアをしていたわけです」(鈴木氏)

 そして多くの人が使っている、スマートフォンアプリがどんなものかも調査して回った。

「おもしろかったのが、米国中部の男性のスマホには、おおよそ『聖書』のアプリと、『Pornhub』が入っていたことです」(同チャン氏)

 スマートニュースが開発したニュースアプリの機能は、実はあまり理解されていない実態なども、ダイレクトにつかむことができたという。こんな具合で、田舎の農家から、昔のテロ現場の跡地から、黒人の居住地区、トランプの支援者集会まで、ひたすらに「日本人の知らない米国」を学んでいった。

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