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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.626

沖縄の記者には追えなかった地域社会のタブー!! 「私宅監置」の実情に迫った『夜明け前のうた』

今の日本社会にも残る「社会的入院」という隔離処置

沖縄本島北部に今も残る監置小屋。コンクリート造りで、出入口は鉄扉となっている。

 原監督は映画が完成した現在も、精神医療や精神福祉についての取材を続けている。私宅監置は地域社会のタブーであり、地縁と血縁によって地域に根付いているウチナンチュ(沖縄出身者)の記者たちには取材しにくい題材でもある。ヤマトンチュ(本土出身者)の原監督だからこそ、映画にすることができたといえる。

「でも、映画が完成したから、ゴールだとは思っていません。映画が公開されても、問題が解決するわけではありませんから。私宅監置は日本国家が法的に認めていた制度。ハンセン病と同じように、県か国のトップが正式に謝罪するべきでしょう。家族を監置していたことを悔やんでいる遺族はとても多い。私宅監置は間違った制度だったことを行政が認め、実態を検証し、謝罪することで、少なくとも遺族たちは後悔の呪縛から解放されることにはなるはずです」(原監督)

 この問題は、決して沖縄だけのものではない。原監督によると、精神障害者を社会的に隔離し、症状が治っても社会復帰できずに精神病棟で過ごさざるをえない「社会的入院」は、沖縄に限らず非常に多いという。私宅監置という制度はなくなっても、私宅監置を生み出し、容認した社会構造は現在も変わっていないことになる。深い絶望の闇から聞こえてくる小さな小さな歌声が、あなたにも届くだろうか。

 

『夜明け前のうた 消された沖縄の障害者』
監督・撮影・編集/原義和 制作/高橋年男 
ナレーション/宮城さつき 音楽/白川ミナ 創作舞踏/Danzatakara.
配給/新日本映画社 3月20日(土)より新宿K’s cinema、4月3日(土)より沖縄・桜坂劇場、4月10日(土)より大阪・シネヌーヴォ、4月17日(土)より名古屋シネマテークほか全国順次公開
(c)2020 原義和
https://yoake-uta.com

最終更新:2021/03/12 12:00
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