日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 悪魔崇拝が招いた結末『ロード・オブ・カオス』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.628

ロック史で最も悪名を馳せた北欧バンドの伝説! 悪魔崇拝が招いた結末『ロード・オブ・カオス』

北欧のメタルシーンを誰よりも知っていた監督

ロック史で最も悪名を馳せた北欧バンドの伝説! 悪魔崇拝が招いた結末『ロード・オブ・カオス』の画像4
自殺願望に取り憑かれたデッド(ジャック・キルマー)がバンドカラーを決定づけた。

 一時期は園子温監督が映画化することが囁かれていた「メイヘム」の伝説は、結局はスウェーデン出身のジョナス・アカーランド監督が撮り上げた。アカーランド監督自身、メタルバンド「バソリー」のドラマーとして活躍し、その後はオジー・オズボーンやローリング・ストーンズらのミュージックビデオの監督を務め、映像の世界でキャリアを重ねてきた。「メイヘム」のボーカルだったデッドとは、生前に交流があったそうだ。

 当時の社会状況や北欧のメタルシーンをよく知るアカーランド監督が撮ることで、無駄な脚色を加えることなくドラマ化されている。登場人物たちを嘲笑することもなく、でもシリアス一辺倒でもなく、若者たちの過剰なエネルギーが招いた青春時代の痛みを生々しく描いてみせている。

 連続放火、爆弾所持、殺人などの罪に問われたヴァーグだが、15年間の服役で仮釈放され、現在はフランスで暮らしているとのこと。ボーカルとギターを失った「メイヘム」は、一度は解散するもその後再結成し、ブラックメタルの大御所バンドとして活動中だ。そして早逝したデッドとヨーロニモスは、混沌世界の王として祀られている。

 誰もが生と死が隣り合わせとなった、危うい狭間を渡り歩く時期がある。アカーランド監督は運よく、その危うい時期を生き延びることができた。『ロード・オブ・カオス』は大人への通過儀礼の門を潜ることを拒んだ、かつての仲間たちを弔うための映画ではないだろうか。

『ロード・オブ・カオス』
原作/マイケル・モイニハン、ディードリック・ソーデリンド
監督・脚本/ジョナス・アカーランド 音楽/シガー・ロス
出演/ロリー・カルキン、エモリー・コーエン、ジャック・キルマー、スカイ・フェレイラ、ヴォルター・スカルスガルド
配給/AGMエンタテインメント、SPACE SHOWER FILMS R18+ 3月26日(金)よりシネマート新宿、シネマート心斎橋ほかロードショー
c)2018 Fox Vice Films Holdings,LLC and VICE Media LLC
https://lordsofchaos.jp

最終更新:2021/03/30 15:39
123
ページ上部へ戻る

配給映画

トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • twitter
  • feed
特集

【4月開始の春ドラマ】放送日、視聴率・裏事情・忖度なしレビュー!

月9、日曜劇場、木曜劇場…スタート日一覧、最新情報公開中!
写真
インタビュー

『マツコの知らない世界』出演裏話

1月23日放送の『マツコの知らない世界』(T...…
写真
人気連載

『光る君へ』道隆が強行した中宮/皇后問題

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・...…
写真
イチオシ記事

バナナマン・設楽が語った「売れ方」の話

 ウエストランド・井口浩之ととろサーモン・久保田かずのぶというお笑い界きっての毒舌芸人2人によるトーク番組『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日...…
写真