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お笑い芸人第2の青春を描いた“リアル・フィクション”小説『三人』発売インタビュー

チュート徳井・SW小沢と暮らした“第3の同居人”桝本壮志―6000人の芸人を送り出した放送作家が予言する「第7世代の次がもう来ている」

3人は、人間関係を面白くする最小単位!?

チュート徳井・SW小沢と暮らした第3のルームメイト桝本壮志 6000人の芸人を送り出した放送作家が予言する「第7世代の次がもう来ている」の画像2

――芸人を描いたフィクションはそれなりに存在しますが、本作は相方ではなく同期という関係に焦点を当てて、しかも1人は芸人ではなく作家という少しズレた立場で、且つ3人というのが新鮮でした。線でつないだら縦でも横でもない、いわば斜めの間柄というか……。

桝本 僕は前々から、世の中にいる人間を最小単位で考えるなら「3」じゃないかな、と思っているんです。2人だったら点と点で線しかないけど、3人になると急に図形になって奥行きが出てくるな、と。

 バラエティのトーク番組でも、僕はよく「三角の関係を作りましょう」って言うんですよ。自分とMCとお客さんもしくは周りのガヤという三角。例えば『踊る!さんま御殿!!』(日テレ系)で、自分とさんま師匠の間だけで直線的な会話する人は“笑いの幅”が狭いし、周りの共感を得られない。でも「皆さんも。こういうことってありますよね? 実は私も~~」と、オーディエンスを巻き込んで三角関係をつくれたら、非常に膨らむんですね。なにか教科書があるわけでもないですけど、僕はテレビの笑いの構造をそう考えていて、だから小説の中にもトライアングルを入れたいなと強く思っていました。

――それこそ徳井さん、小沢さんと桝本さんは大阪NSC13期の同期ですよね。

桝本 そうですね。世の中、ライバル関係はよく描かれますが、同期ってあんまり描かれてないな、と思ってました。同期って、自分たちで勝手にドアを叩いて同じところに入ってきて、いつの間にか同じスタートラインが引かれてるんですよね。「ほら、走れ」って言われて走り出した後は、二人三脚で階段を上ったり励まし合ったりする仲なんですけど、しばらくするとその背中がキラキラ眩しく見えて苦しくなる瞬間が、僕はあって。

 同期にチュートリアル、ブラックマヨネーズという2組のM-1チャンピオンがいて、ほかにも野性爆弾や次長課長とかキラキラしたやつらがいるんですよ。自分が芸人を廃業して、彼らをテレビで見ていたときの苦しさといったらなかったんですが、それって芸人界だけじゃなくて、いろんな組織でみんな経験すると思うんです。それを僕なりに表現してみたかったというのはありました。

――それともうひとつ気になったのが、本作の主人公である売れない芸人の“僕”についてです。一人称視点の地の文では比較的しっかり自分の気持ちを分析したり言葉にできたりしているのに、対人コミュニケーションだと感情的になりやすくて、そのせいでいろいろうまくいかない。この人物造形には、桝本さんがこれまで見てきた芸人さんの傾向を反映した部分があるんでしょうか?

桝本 ありますね。“僕”を大阪出身にしたのは、特に大阪人はそういう傾向が強いと思ってるからなんです。僕は27年前、まだお笑いの学校が吉本の大阪校しかなかった時代の生徒でしたが、元相方をふくめ大阪出身の同期たちが「自分たちがいちばん面白い」と思ってるのを感じていました。「田舎もんが何言うてんねん、大阪がいちばんおもろいんや」と。

 自分の中にそういう自分の像をつくっちゃってるんですね。でもそういう思いがプライドになって、客前に立ったときに力を発揮できなくて困惑する。そのときに、喜怒哀楽の中で怒りを選んでしまってついつい人とのコミュニケーションが強くなっていってしまう。そういうタイプは当時散見されました。僕自身も、そうだったと思います。

――そうなんですね。自分は関東育ちで、大阪出身の芸人さんを取材する機会がたまにあるんですが、そういう印象はあんまり抱いてなかったです。

桝本 まあ、お笑いの学校が大阪にしかなかった時代の話ですからね。

――「俺たちがいちばん面白い」というプライドがあるであろうことはわかっていましたが、うまくいかなかったときにコミュニケーションの当たりが強くなる、というところまでは考えが及ばず……。でもそう言われると、過去に芸人さんに限らず関西の人とのやりとりで、違和感を覚えた場面に納得がいきます。

桝本 学生の飲み会とかでもあるじゃないですか。「なんでツッコまへんねん、大阪やったらなぁ~~」って。言われた側は「知らんがな」って話ですが(笑)。

 僕はいま講師をやっていますけど、斜に構えることがかっこいいと思っていたり、懐に入られることを拒んで怒りのほうにいっちゃうタイプは、今もいますよ。でもそれは、彼らの防御策なんですよね。そうやって振る舞うことによって「自分の笑い」を守ってきた。“お笑い愛”の一部でもあるんです。

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