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映画『100日間生きたワニ』はコロナ禍でこそ生まれた傑作! そして原作の炎上騒動に落胆した人にこそ観てほしい理由とは

豪華なボイスキャストの掛け合いの尊さ

映画『100日間生きたワニ』はコロナ禍でこそ生まれた傑作! そして原作の炎上騒動に落胆した人にこそ観てほしい理由とはの画像2
©2021「100日間生きたワニ」製作委員会

 本作の目玉となっているのは、豪華なボイスキャストの出演。ワニ役を神木隆之介、ネズミ役を中村倫也、モグラ役を木村昴、ワニが恋するセンパイ役を新木優子が務めている他、ファーストサマーウイカ、清水くるみ、Kaito、池谷のぶえ、杉田智和と、バラエティに富んだ豪華な面々も脇を固めている。一見するとネームバリュー先行の無節操なキャスティングに思われるかもしれないが、実際の本編ではそれぞれが役にしっかり合っており、違和感を覚える箇所は1つとしてなかった。

 何より、その耳が幸せなボイスキャストの掛け合いが、キャラ同士の関係性の尊さをさらに盛り上げている。純粋無垢を絵に描いたような神木隆之介と、マジメだが複雑な思いも抱えている中村倫也による、気のおけない親友同士のイチャイチャぶりはずっと聴いていたくなるのだ。

 さらに、上映中の『ヒノマルソウル~舞台裏の英雄たち~』https://www.cyzo.com/2021/06/post_283320_entry.htmlでの好演も記憶に新しく、同日公開の『東京リベンジャーズ』にも出演している山田裕貴が、良い意味で「なんだコイツ?」と思ってしまう映画オリジナルキャラのカエルを見事に演じ切っていた。それぞれのボイスキャストのファンにとっても満足できるだろう。

 そして、この「キャラの掛け合い」こそが、この映画の最大級の魅力でもあった。思いがけない出会い方をするも、ちょっとコミュニケーション不全でもあった彼らの関係が変化していく様は微笑ましくあると同時に、やはり作品全体には死という出来事が通底しているため、同時に切なくなくもなる。この感情の揺れ動きを、この豪華なボイスキャストの演技でたっぷりと堪能していただきたいのだ。

原作の炎上に対する「アンサー」なのかもしれない

 原作『100日後に死ぬワニ』は最終回を迎える際、まさにワニが死を迎えたタイミングで映画化やグッズ化など無節操な商業展開が発表されたために炎上してしまった。例えフィクションとは言え、死という最も重い出来事をあっという間に風化させてしまうような、「死を悼む」という当たり前の文化であり感情をないがしろにされたようで、不快感を覚えてしまう方が多かったのだ。

 だが、映画『100日間生きたワニ』は、この原作の炎上騒動に失望した人こそが、むしろ納得できるものに仕上がっていた。これまた具体的なことはネタバレになるので伏せておくが、死という最も重い出来事への「向き合い方」をとても切実に描いており、それこそがテーマと言ってもいい内容だったのだから。

 上田慎一郎監督は炎上騒動について「作品を早く届けたい人の気持ちもわかるし、死を題材にした作品なので余韻をもう少し感じたかったという人の気持ちもわかる」と中立的なコメントをしており、おそらく炎上が直接的に作劇に影響を与えたということではないのだろう。だが、あくまで個人的にだが、この映画『100日間生きたワニ』は、原作の炎上についてのある種の「アンサー」を提示しているとさえ思えたのだ。それは、日常的に死を身近に感じるコロナ禍でこそ、より普遍的に多くの人に響くものであった。

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