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映画『100日間生きたワニ』はコロナ禍でこそ生まれた傑作! そして原作の炎上騒動に落胆した人にこそ観てほしい理由とは

引き算も足し算もできない、濃密な63分の上映時間

映画『100日間生きたワニ』はコロナ禍でこそ生まれた傑作! そして原作の炎上騒動に落胆した人にこそ観てほしい理由とはの画像3
©2021「100日間生きたワニ」製作委員会

 本作のもう1つの魅力であると断言したいのは、上映時間が63分であること。実際に本編を観てみれば、この上映時間で全ての伏線が巧みに回収され、キャラクターたちの関係性の変化も十分に描かれている、過不足のない内容であることがわかるだろう。

 この上映時間の短さを「物足りない」とマイナスに捉える方もいるかもしれないが、筆者は全面的に支持したい。全体的にテンポ良く展開し、キャラの関係性の変化を丁寧に描きつつ、過度にウェットにすることや「説明」も避けている。これ以上は引き算も足し算もできない、濃密な内容になっていたのだから。

 アニメとしての作りは一見すると「ゆるく」簡素なものに見えるかもしれないが、裏を返せば観ていて疲れない、ほっこりと癒されるものだと、こちらも十分にポジティブに捉えられる。しかも、スクリーン映えする、あっと驚く「見せ場」のサービスも込められていた。上田監督の妻であり、共同監督と脚本を務めたアニメ作家のふくだみゆきも、これ以上のない仕事をしていたと言っていいだろう。

 なお、本作は前述した原作の炎上のみならず、地震でオンラインイベントが中止・延期、緊急事態宣言に伴う映画館の再休業により公開延期など、逆風に逆風が吹き荒れた作品でもある。原作が大いに嫌われてしまったため、この映画のレビューページにありもしない内容を記す心ない「大喜利」が行われてしまっている現状もある。だが、実際に本編を見れば、原作のアレンジに驚き、コロナ禍でこその切実なテーマを描いた、真摯に作られた映画であることはきっと伝わるはずだ。「どうせこんなもんでしょ」とたかを括ることなく、劇場でご覧になってほしい。

参考記事:
「人生の予防接種として見てほしいですね」映画『100日間生きたワニ』の上田慎一郎監督とふくだみゆき監督にインタビュー|@DIME アットダイム https://dime.jp/genre/1164436/

『100日間生きたワニ』
公開表記:7月9日(金)全国公開
©2021「100日間生きたワニ」製作委員会
配給:東宝

ヒナタカ(映画ライター)

「ねとらぼ」「cinemas PLUS」「女子SPA!」「All About」などで執筆中の雑食系映画ライター。オールタイムベスト映画は『アイの歌声を聴かせて』。

Twitter:@HinatakaJeF

ひなたか

最終更新:2021/07/09 12:00
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