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「だから日々、いろんな戦(いくさ)があっても闘っていけるんです」

井手上漠、“ジェンダー問題の発信”をやめる、その日を見つめて

青春っぽいバカなこととか、10代ならではの自由も味わいたいんです

井手上漠、ジェンダー問題の発信をやめる、その日を見つめての画像6

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──井手上さんは「ジェンダー問題の発信者」としてメディアに取り上げられる機会も多いですよね。このインタビューもそのひとつではありますが……そのような立場に置かれることについて、率直にどのような気持ちを抱いていますか?

井手上:私が「かわいすぎるジュノンボーイ」として取り上げられたのって、もう4年くらい前のことなんですけど、当時の日本は今よりもまだジェンダーレスな存在って表舞台ではめずらしかったと思うし、ジェンダーってなんだろう? って人もまだ多かったんじゃないかな。だから、学ランを着ている私がメディアで注目されたことも「それはそうだな」って感じでした(笑)。当時から否定的な声ももちろんあったんですけど、意外と肯定的な声が多かったので、うれしかったです。

 それまでは小さな島で、私を受け入れてくれる母や友達がいて、すごく恵まれた環境の中で生活していたから、島の外の人たちが自分のことを見てどんなことを感じるのかわからなかったんですけど、受け入れてくださる方々の声を聞いて「やっぱり、カッコいいとか可愛いって、男も女も関係ないよね」って思えて。周りの人に恵まれているのは、東京に出てきてからも同じですね。これからも「ジェンダー問題の発信者」として注目されることも、自分の意見にどんな反響があるかには敏感になっていきたいと考えています。

──そんな井手上さんが、今年5月、Twitterで「大人になりたくないな でももう大人の歳かな やだなやだな」とツイートされていて……ちょっと意外だったんです。

 

井手上:なんか……大人になりたくないんです(笑)。なんだろう、今がいいんです。ただ来年は20歳、いやおうなしに成人とはなるんですが、引き続き“大人”としてではなく。常に進化していたいとは思いつつ、今が最高だなって気持ちもあるので。そう思ってきたから、島の高校時代も私はやりたいことをやりきって卒業する事ができて、上京してきました!
 過去に戻りたいって気持ちは一切ないんです。だからこそ今、時が止まればいいのにって思うことも多いですね。

 よく「しっかりしているね、19歳には見えない」と言っていただくんですけど、私は19歳なんですよ。だから、青春っぽいバカなこととか、10代ならではの自由も味わいたいんです。大人の楽しさっていうのももちろんあると思うんですけど、まだ私はそれを知らないから仕方ないですよね。

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──小さな頃から自分の性別について悩み、さまざまな困難を乗り越えてこられた井手上さんなので、そのぶん自分自身と向き合うことが多くて、そういった“壁”に気がつくタイミングも早いのかなと拝察します。

井手上:やっぱり悩むこともつらいことも多かったですから。小学5年生から自分の見られ方とかを意識せざるを得なかったから、自分自身のことを客観視していたのかも。誰から何も言われることのない性別だったら、どんな人生だったんだろうって考えることもありますけど……。

 でも、そう思うこともあったけど、私は私でしかないから。だから今は「大人になりたくない」と思うけど、年齢を重ねることへの不安だって乗り越えていけそうな気がするんです。

 私がジェンダー以外の“壁”にぶち当たっても、乗り越えていけると思えるのは、やっぱり母のおかげ。母が教えてくれたことって、すごくたくさんあって。めちゃくちゃ厳しかったですし、子どもの頃はその教えを「なんだよ、それ」って思ってたことも多かったんですけど、今となればその意味がすごくわかる。なので、大人になっていくことは、わかることがもっと増えていくことなのかなって思えるんです。

──来年には20歳を迎えますが、今後は、どんな活躍をしていきたいですか?

井手上:たぶん、今みたいなジェンダーについての発信はやめるときがくると思います。しなくてもいい時代がきっと来るから。

 その時のことはまだ決めていないけど……私の人生を助けてくれた、大好きなメイクや美容のジャンルで活躍していたいかも。あ、でも、美容のジャンルにもやっぱりまだジェンダーの課題はあって。メンズメイクが流行ったり、少しずつ変わりつつはありますけど、まだまだやれることがあると思うんです。

 あと、前まで興味がなかったものに興味を持つことが多くなりました。最近、マネージャーさんと美術館に行くことが増えたんです。アートって、人が作り上げているからこそ、一見なんの脈絡もなさそうなものでもそこには意図があるわけじゃないですか。その意図はなんだろう、これはどうして作られたんだろうっていうことを考えていくと、見え方が変わってくるんですよね。それは美術館にあるようなアートだけじゃなくて、街にある、なんでもないようなものもそう。普段は気にも留めないようなことに注目することで、一気に景色が変わっていく。そういうものに、インスピレーションを受けています。

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最終更新:2022/12/07 15:46
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