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スーパー・ササダンゴ・マシン"流行"を考える〈ポップカルチャー生涯学習〉

『チェリまほ』は1周回ってプロレスだった──スーパー・ササダンゴ・マシンとBLの邂逅

 K-POP、2.5次元、タピオカ、韓国ドラマ…etc.「流行る」カルチャーには理由がある!DDTプロレスリングのレスラー兼タレント兼新潟県の金型工場「坂井精機」代表取締社長のスーパー・ササダンゴ・マシンが、世の中の流行を眺めながらプロレスとDDTの未来を考える連載。

第1巻はコチラ↓

第2巻「BLが流行ってるからやってるわけじゃないんですよ」の回

『チェリまほ』は1周回ってプロレスだった──スーパー・ササダンゴ・マシンとBLの邂逅の画像1
『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』公式ホームページより

※映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』のネタバレを含みます。

編集T:ササダンゴさんが手がけるDDTの2.9次元ミュージカル『まっする(読み方:ひらがなまっする)』は、毎回冒頭で竹下幸之介選手演じる思切投太郎(おもいきり・なげたろう)と、上野勇希選手演じる高久辛飛光(たかくから・とびみつ)によるBL風味のくだりがあります。あれを見て、ササダンゴさんはBLというものをどうとらえているんだろう? と思ったんですね。今回はそこを掘り下げるべく、事前にBLマンガが原作になっている実写映画『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』を観ていただきました。率直に、どうでしたか?

スーパー・ササダンゴ・マシン(以下、ササ):『チェリまほ』は、原作とドラマが話題になっていたときにどんな内容なのかはうっすら耳に入っていたんです。それで今回映画を観て、いろいろと衝撃を受ける部分がありました。

 ドラマのストーリーとしては、赤楚衛二さん演じる安達が童貞のまま30歳になって、それをきっかけに人の心が読めるようになり、同期のエリートである町田啓太さん演じる黒澤が自分に好意を持っていることを知ってしまい……というところですよね。そして映画版は付き合った後の話なんですけど、パンフレットを読んでいて、あらためて気づいたことがあって。

編集T:パンフも買ったんですね!

ササ:映画館の売店でちゃんと買いました。パンフを見て、赤楚さんと町田さん以外にも役者さんがいっぱい出ていることをあらためて認識したんですが、映画としてはほぼ2人しか出ていない印象なんですよね。どんな映画でもどんなスターでも、こんなに長時間自分たちしか映らない映画ってなかなかなくないですか? それがすごいなと思いました。で、主演の2人だけが出てくるこの感じが、1周回ってプロレスっぽいんですよ。

編集T:「プロレスっぽい」とはどういうことでしょうか。

ササ:プロレスは興行ごとにメインイベントがありますよね。試合中はレフェリーやセコンドもいるけど、結局その2人だけにグーッとクローズアップする。いってみれば、『チェリまほ』ドラマ版が第1試合からセミファイナルまでだとすると、映画はメインの試合のゴングが鳴った瞬間からなんですよ。だから2人しか出てこない。ドラマ版のヒットがあった上でのボーナストラック的なものだと思うんですけど、もう遠慮なく2人だけの世界を描くぞ! って物語でしょう。びっくりするくらいお互いに好きと好きで、大きな事件も起こらずただただその愛を育んで、家族や周りの友人、仲間に自分たちの恋愛の話をして、最後に結婚式を挙げるというストーリーで。

編集T:たしかに、これといった大きなハプニングやトラブルは起きないですね。安達が転勤するのも一時的なものだし、転勤先での出来事も大事件にはつながりません。

ササ:映画にはつきものの、わかりやすい起承転結や波乱万丈なエピソードがあるわけではない。それなのに、「俺は何にこんなに没入してるんだろう?」ってくらい引き込まれていくわけですよ。だって、今までこれと同じようなものを観たことがないから。強いて言うなら一番似ているのは、プロレスラーの同門対決の試合ですね。

編集T:同門対決というと、どういうニュアンスなんでしょうか?

ササ:お互い憎しみ合ってるわけでもなく、ビジネスのためのわりきったものでもなく。純粋に「戦う」ということが全ての目的となる戦いというか。

編集T:なるほど。強固に密な関係性が明確に存在する2人によるドラマということですね。

ササ:そうですね。あと、安達くんが転勤した先に、松尾諭さんがいるじゃないですか。「松尾さんが嫌な恋敵か、問題ある上司になるのかな」と思ったら、そういう感じでもなかった。本当に優しい世界で、悪役もライバルも出てこないのがすごく新鮮でした。

編集T:それでいてファンタジーすぎなくて、現実ともちゃんと接続しているんですよね。観終わった後、映画館を出て歩いていると「この人混みの中にあの2人もいるのかもな」と思うような感覚がありました。

ササ:すごく現実的なんですよね。もちろん、周りはあんなに理解があるわけではなかったり、優しいだけの世界ではなかったりするんでしょうが、それにしても説得力がありました。パンフに「安達のスーツの着こなし方を変えている」という話が載ってたんです。俺、これに感動しちゃって。初期の安達はネクタイが緩んでたりシャツやジャケットのサイズ感が大きめだったりしてちぐはぐな感じをあえて出していて、仕事ができるようになってきてからはネクタイもスーツもしっかりさせることで、男性の成長を描いている、と。そういう細かい配慮も、現実味を加えているんでしょうね。唯一配慮が足りない場面を挙げるとしたら、ニジマスを素手で掴むシーンですかね。ニジマスは人の体温で火傷するので、ニジマスにだけは優しくなかった(笑)。

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