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解散後に日清食品CMで共演のピスタチオが証明した“特大花火の一発屋”パワー

解散後に日清食品CMで共演のピスタチオが証明した特大花火の一発屋パワーの画像1
「な~んのっ?」で一世を風靡したピスタチオ(公式YouTubeチャンネル「ピスタチオーですっ。」動画より)

 今とあるCMがネットで話題となっている。それは日清食品のカップ麺「カップヌードル辛麺」のCMだ。

 日清のCMは元々特徴的で、話題となることが多かった。例えばカップヌードルプロのCMでは眉村ちあきさんの「顔ドン」という楽曲の替え歌を使用し、その楽曲のMVと同じ動画クリエイターを使用して独特なCMにしたり、今や定番商品となったカップヌードル味噌では「オレンジレンジ」さんの『SUSHI食べたい』の替え歌を使用し、カップヌードルプロ同様、楽曲もアニメもMVをなぞっていたり、「お椀で食べるシリーズ」では、「有吉の壁」(日本テレビ)で話題となったジャングルポケットさんのネタである「ストレッチャーズ」の”どこにも効かないエクササイズ」を「おわんわ~ん」という奇妙なメロディと組み合わせ、かなり印象に残るCMを作成したり、カレーメシのCMにおいては「ハリウッドザコシショウ」が自身のネタを披露し続けるという奇想天外なものとなっている。

 ちなみに僕が好きだったのは日清の代表商品「カップヌードル」のCMで“アオハル”シリーズだ。『魔女の宅急便』『アルプスの少女ハイジ』『サザエさん』の主人公が高校生になって青春の日々を過ごすという架空の物語を描いた作品。多くを語らないこの世界観がとても好きだった。

 このように常にインパクトに残るCMを世に送り出している日清食品さんなのだが、今回なぜ「辛麺」のCMが話題になっているのか。5月26日から公開された「カップヌードル辛麺」のCMに“白目漫才”で一世を風靡し、惜しまれながら昨年5月に解散したお笑いコンビ「ピスタチオ」が起用されているからだ。ピスタチオさんにそっくりな2体のフィギュアを作り、20日間もかけてコマ撮りしたダンスCMで、渾身の作品となっている。

 しかもフィギュアだけではなく本物のピスタチオさんお二人も登場し、共演しているのだ。解散したコンビがCMに起用されるだけでも珍しい事だが、芸人を引退し、タレント業を始めた小澤さんが元のコンビとして、芸人として出演していることに尚更驚きだ。

 「いつの間に解散していたの?」とこのCMが話題となったことで解散を知った人もいる一方で「どんな形でもピスタチオが復活するのは嬉しい」「久しぶりにテレビで見れて嬉しい」など、ファンだけではなく、一般視聴者からも好意的に受け止める声が多数上がっている。

 これほど惜しまれつつ解散したピスタチオさんだが、解散した理由としては、当時まだまだ芸人として売れたいと思っている伊地知さんに対して、家族を守る為に今の状況を変えたい小澤さんが解散したいと申し出たことだという。

 「まだまだ売れたい」「家族の為に芸人以外を」というこの二人の思いを見る限り、芸人「ピスタチオ」としては正直生活をしていけるだけの経済状況ではなかったように思える。白目漫才でブレイク後、人気が失速したことで舞台を中心に活動していたが、それだけでは食べていけるほど甘い世界ではなかったということだ。

 「ピスタチオ」さんは“一発屋”という括りにされることが多いが、一発屋芸人の中でも一発の大きさに違いがあり、ピスタチオさんは一発屋芸人の中でも大きな一発を打ち上げた芸人と言えるだろう。何故なら今回のCMが話題になり、ニュースに取り上げられたというのが、当時「ピスタチオ」さんが与えたインパクトは絶大であり、今もみんなの脳裏に焼き付けられているということ。それが大きな花火を打ち上げた一発屋であったという確たる証拠だ。

 「ピスタチオ」さんのような芸人は、ただネタが面白いからブレイクした芸人とは違い、そのネタに芸術性や面白さとは違ったインパクトがあり、当時の流行なども混ざり合い、ある意味「ファッションアイコン」としてブレイクしたと言える。このようなブレイクの仕方は唯一無二のもので、流行り過ぎて飽きられて一時人気が無くなったとしても、ただ飽きられてしまっただけで、その威力が無くなってしまったわけではないのだ。

 なので当時の流行を知らない世代や知らない国に行くことにより「ファッションアイコン」としてのパワーが再燃する可能性がある。最近で言うと、世界的に人気を誇るイギリスのオーディション番組「ブリディッシュ・ゴット・タレント」へ出演し、審査員に大絶賛され、海外のニュースで取り上げられるまでになった「とにかく明るい安村」さんが良い例だ。日本のテレビ番組では多少飽きられてしまった感があったが、「ピスタチオ」さんと同じように「ファッションアイコン」としてブレイクした「とにかく明るい安村」さんは海外のオーディション番組をきっかけに人気が再燃した。

 僕は日本の芸人が作り出すネタは、海外のお笑いネタに比べて、面白さの基準が高く、芸術性も兼ね備えていると思っている。そんなお笑い水準の高い芸人の中でも、ブレイクした芸人は特に優れており、さらに「ファッションアイコン」となった芸人は本当に特別で、芸人としての瞬間最大風速は世界トップクラスと言えるだろう。

 そんなパワーを持つ芸人が、ひょんなきっかけで再ブレイクするのは稀なことではなく、至極当然なことなのだ。

 今までの芸人界はバラエティ番組に出演することが最高峰であり、それが全芸人の目的であった。しかし僕が芸人をしていた頃とは比べ物にならないくらい多種多様な放送媒体が現れ、あの頃とは全く違う世界線になった今、テレビに飽きられた芸人がまたテレビ出演を目指すのは下策であり、時代錯誤である。これからの芸人はテレビに固執しない柔軟な目標を持たなければならない。

 これからは一発屋としてテレビに出た芸人が、自分の居場所を見つける為に新しいネタを探したり、テレビに出続ける為の隙間を探すのが当たり前ではなく、ブレイクしたその大きな一発でさらなるブレイクを見つけるのが当たり前の時代になるのだ。

 二発屋、三発屋と呼ばれる芸人が出現し、瞬間的にブレイクした芸人が落ちぶれるのではなく、何度もブレイクし最後まで芸人を全うできるお笑い界になるよう願っている。さあ一発屋芸人の皆さん、再ブレイクする準備は出来てますか?

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2023/06/04 07:00
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