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『水曜日のダウンタウン』ドッキリ企画でアルピー平子への“常識を覆す”批判

『水曜日のダウンタウン』ドッキリ企画でアルピー平子への常識を覆す批判の画像1
『水曜日のダウンタウン』TBS公式サイトより

 「ツイッター」があれよあれよと「X」になり、「ツイート」は「ポスト」、「リツイート」は「リポスト」など、細かな変化に違和感を感じながら、ライターさんたちは「X(旧ツイッター)」という表現が板についてきた今日この頃。

 僕もこのコラムで初めて「X(旧ツイッター)」という書き方をしようと思っているが、何となく気恥しさもあり「ツイッター」でごり押ししようか悩んでしまう。とまあどうでもいい話を枕にし、さっそく本題に入ろう。

 今月16日に我々ライター御用達番組「水曜日のダウンタウン」(TBS系)にて、とあるドッキリが放送された。企画のタイトルは「ロケ中、ミスをしたスタッフが次々とボウズになって戻ってくるとんでもないパワハラ現場、テンションの作り方難しい説」というもの。

 タイトル通り、ロケ中、ミスをしたスタッフをパワハラディレクターがその場で坊主にすることを命じ、実際にロケ中に坊主にして現場に戻り、それを見た芸人やアイドルがテンションを保っていられるかどうかを検証するというものだった。ドッキリはどんどんエスカレートしていき、最終的にはパワハラディレクターも含めて、演者以外のスタッフ全員が坊主になる結末。今の時代ならではの違和感を感じられるやり過ぎなドッキリで、事前に坊主にされる人たちは「坊主になっても良い」または「坊主になりたい」という役者や芸人、エキストラさんたちを集めており、坊主にすることに悲愴感を持たせない笑いやすい環境を作っての放送となった。

 そんな水ダウならではのドッキリが、あることで話題となったのだ。それは仕掛け人として登場したアルコ&ピースの平子さんが「X(旧ツイッター)」で次のような投稿をした。

 「昨日の水ダウをご覧になった方から『平子さんは止めてくれると思った。ガッカリです』といった類のDMを数件頂きました。」

 例の坊主ドッキリにはスタッフに女性も混ざっており、性別関係なく、パワハラによって坊主にされるというある意味理不尽な上下関係を究極に視覚化したものであり、見て嫌な気分になる人は間違いなくいる。そんな人が普段テレビに出ている平子さんのキャラクターなら、理不尽な悪に対して戦ってくれると思っていたのに、強制的に坊主にすることを容認しているように見えたのでがっかりしたということなのだろう。

 もちろんこの声は世間一般の声ではなく、この投稿を見た人たちは「仕掛け人が止めたら企画成立しないじゃん」や「番組内で最初に仕掛人って名言されてたのに……」「誰も損してないはずなのに、叩かれるの不憫ですね」など驚きの声が寄せられた。

 このニュースを見たときに感じたのは、お笑いにとって伝える側と受ける側の「認識の一致」がもっとも大切なのだというところだった。

 ドッキリの仕掛人が、ドッキリで繰り広げられる異様な世界観に対して疑問を持つことは絶対にない。しかしそれはドッキリという企画自体を知っているという前提で成立する構造であり、ドッキリの構成を知らない人がいた場合、上記のような感想になってしまうのだろう。

 ただこのような構成はもはや「暗黙のルール」であり、「お笑いの常識」である。なのでこの構造を知らない事自体がお笑いに対して無知であり、意見を述べる前にある程度調べるべきなのだ。もちろんバラエティにおいて事前に調べるなどとても面倒で誰もやりたくないことだ。だが、自分が感じた違和感を出演者当人に意見を伝えられる時代になったのだから、自分の知識不足により相手を傷つける可能性があるのならば、考えを伝える前に自分が感じた違和感は本当に違和感なのか、無知による違和感なのかは調べるべきなのだ。上記のようなドッキリは確かにお笑い初心者には少し難しい題材かもしれないが、もっと基本的なところで否定される場合もある。

 僕がお笑い芸人をしていた時代に、とあるライブに出演する機会があった。お笑いライブには基本的にアンケートが配られて、ライブ自体の感想や、芸人一組ずつへ対する感想や意見などを記入できるようになっている。もちろん個人的な感想なので、「面白い」や「最高」などという意見もあれば「つまらない」や「辞めた方がいい」など辛辣な意見も書かれる。これはあくまで主観の感想なので、いち意見として受け止めることは出来るが、そのライブでは僕の常識を覆すような感想を書かれてしまったのだ。

 それは「客席から見て右側の人(僕のことだ)は左側の人(相方のこと)のように面白い顔をしたり、変な動きをした方が良いと思います。もっと協力するように頑張ってください」というものだった。

 確かに僕は相方に比べて面白い顔をしたり、変な動きはしない。何故なら相方がボケで僕がツッコミだからだ。もちろんコンビの両方がボケるようなネタであれば、上記の感想はあながち間違いでは無いかもしれないが、僕の組んでいたコンビはボケとツッコミがはっきりしており、相方がひたすらぼけて、それに対して僕がひたすらつっこんでいくというスタイルだったので、僕がボケるということはほぼないのだ。

 お笑いのライブに来ている人は漫才の基本的な形は知っているという僕の固定観念のせいで衝撃を受けてしまったが、面白い事をやっているライブという情報だけで見に来たお客さんだったら、面白い事をせずに注意し続ける僕は違和感の塊だっただろう。しかしそんなことを意識していたら仕事にならない。漫才の途中で「僕はツッコミなんで面白い事をするんじゃなくて、注意するという役割ですよぉ」なんて説明を入れるのは明らかに時間の無駄だ。なのでこのように「暗黙のルール」を知らない意見は無視してしかるべきなのだ。

 ちなみに10年以上芸人をしていたが、このようなアンケート内容はこれが最初で最後だった。

 話は戻るが、そんな誰もが「?」になってしまうDMに対して平子さんは

 「もし次の機会があれば仕掛け人という概念をぶち壊し、全力で阻止してやろうと心に誓いました」

 と述べ、この頓珍漢な意見すらも笑いに変え、さすがボケというところを見せてくれた。こういう部分が平子さんの魅力であり、愛される要因なのだろう。

 ちなみに僕はお笑いを始めたての頃、相方の母親に「なんで息子が面白い事やってるのに途中で止めるの?最後までちゃんと話を聞いた方が良いよ」と注意されたことがあったが、いまだに無視し続けている。

檜山 豊(元お笑いコンビ・ホームチーム)

1996年お笑いコンビ「ホーム・チーム」を結成。NHK『爆笑オンエアバトル』には、ゴールドバトラーに認定された。 また、役者として『人にやさしく』(フジテレビ系)や映画『雨あがる』などに出演。2010年にコンビを解散しその後、 演劇集団「チームギンクラ」を結成。現在は舞台の脚本や番組の企画などのほか、お笑い芸人のネタ見せなども行っている。 また、企業向けセミナーで講師なども務めている。

Twitter:@@hiyama_yutaka

【劇団チーム・ギンクラ】

ひやまゆたか

最終更新:2023/08/24 20:00
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