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元ハードコアパンクスが氷室京介を独自に更新! DEATHROが追求する令和のJ-ROCK

「DEATHRO聴いてたら恥ずかしい」と思われたい

元ハードコアパンクスが氷室京介を独自に更新! DEATHROが追求する令和のJ-ROCKの画像3

――ハードコアバンドをやっていた時期も、J-ROCKに目配りはしていたんですね。

D 氷室さんにしても、中学でパンクとか聴くようになってから離れていたんですけど、06年にうちの兄貴の幽閉(HARD CORE DUDE)から「氷室京介が今のアルバムでJimmy Eat WorldとAFIをカバーしてるらしいよ」と聞いて、そこで戻ってきたんです。そのアルバムは『IN THE MOOD』というんですけど、めっちゃエモ系のバンドから影響を受けていて。やっぱり氷室さんはLAに住んでるので、向こうの第一線で活躍してる人たちを起用してるし、その次の『“B”ORDERLESS』(10年)というアルバムもQueens of the Stone AgeのエンジニアとかアレンジャーをやってるAlain Johannesと一緒に作ったりしてるんですよ。

――へええ。

D 僕はこの『“B”ORDERLESS』のツアーで初めて氷室さんのコンサートを観たんですけど、開演前のBGMで氷室さんのiPodに入ってるプレイリストを流してたんです。その選曲が、Vampire WeekendとかArctic Monkeysみたいなメジャーどころから、日本だと高円寺のレコードショップBASEとかに行かないと手に入らなそうなマイナーなガレージバンドまで、めっちゃ聴き込んでる感じで。当時、氷室さんは50歳だったんですけど、その年齢になっても今の音楽を追い続けている。そういう姿勢ってすごく健全ですよね。だからDEATHROの音楽にしても、ただの懐古趣味じゃなくて、今の表現としてありたいと常々思っています。

――そんな氷室京介ですが、ロックという枠組みでは評価されにくいというか……。

D そこは僕も「偏見を取り払って聴いてほしい」と声を大にして言いたいですね。一方で、例えば「ミュージック・マガジン」とかでBOØWYや氷室さんが日本のロック史から完全に亡き者にされているあの感じも嫌いじゃないんですけど。自分もそうありたいというか「DEATHRO聴いてたらちょっと恥ずかしいな」って思われたいです。

――そんなふうに思われたかったんですか?

D 背徳感というか、聴いてることを大っぴらに言えないような、市民権を得ていない感じ。僕のフェイバリットのJUSTY-NASTYとかSTRAWBERRY FIELDSとかDECAMERONとか、さっき名前を出したDIE IN CRIESとかも、たぶん一般的な認知度はそう高くないし、サブスクにもないんですよ。だから、今そういうのを聴くにはブックオフでディグるしかない。そんなところにもロマンを感じるんですよね。まあ、DEATHROの曲は普通にサブスクにあるんですけど。

自分が聴きたい曲を作る生涯ナルシスト

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――DEATHROさんは間もなくソロ活動5年目を迎えますが、この4年間を振り返って予想外だったことは?

D バンド時代の僕を知らない、つまりハードコアパンク経由じゃない人たちがライブとかに来てくれるようになったことですね。

――でも、DEATHROさんの曲はすごいキャッチーなので、さもありなんというか。

D キャッチーであることは自分のセールスポイント……っていう言い方はいやらしいですいけど、ひとつの特長として意識しています。ただ、それは打算的なキャッチーさではなくて。

――打算的なキャッチーさ?

D キャッチーな曲にしたほうがウケると思って作ってるんじゃなくて、単にキャッチーな曲が好きな自分が作るからキャッチーな曲になるというか。要は、自分が聴きたい曲を作ってるんですよ。だから自分の作品めっちゃ聴きますもん。例えば1stアルバムの『PROLOGUE』(16年12月リリース)も「Lo-Fiなガーレジバンドがビートロックをやったらカッコいいだろう」と思って、自分がそういうのを聴きたくて作ったので。

――自分の曲をよく聴くというのは、ナルシシズムとは違うんですか?

D いや、完全にナルシシズムですよ。自分は生涯ナルシストです。

――ちっちゃい頃から?

D そうなんじゃないですかね。歌うのが好きな子どもだったので、小学校に上がる前は親戚の集まりとかでずっと歌ってましたし。小学校では休み時間にブランコの前でTUBEの「シーズン・イン・ザ・サン」とかを歌ってたり。なんでブランコの前かというと、ブランコに乗ってる子はその場から離れられないから。中学校でも、遠足とかでひとりビジュアル系カラオケ大会みたいなことをやってましたね。

――クラスメイトの反応は?

D 「ああ、またやってんな」みたいな感じだったと思います。僕は単に人前で歌うのが好きだっただけで、聴いた人がどう思うかとかはまったく考えてなかったんですよね。

――そんなに歌が好きな人がハードコアを経由するというのも面白いですね。小中学校時代のエピソードだけ聞くと、そこからプロの歌手を目指してオーディションを受けたりしそうですけど。

D そこはやっぱり14~15歳のときに食らったハードコアパンクの、特にU.G MANのインパクトが強すぎたんですよね。僕は中2の途中ぐらいから、兄貴の幽閉といかに限られたお小遣いの中でいっぱい音源を買うかを考えて、淵野辺とか本厚木のディスクユニオンで90年代初頭のヴィジュアル系バンドの中古CDや、フリーウィルとかエクスタシーの初期カタログの中古レコードを漁ってたんですけど、そのうちほかのコーナーにも目が行くようになって。あと、「FOOL’S MATE」にU.G MANのレビューが載ってたりして気になっていたとき、たまたまU.G MANとCHIKENSHITのスプリット7インチを見つけたんです。

――ピンク色のジャケットのヤツですよね。僕も持ってました。

D そうそう。そのジャケ裏を見たら、7インチなのに片面に7曲ずつ入っててビビったんですよ。僕が知ってる7インチって、A面とB面に1曲ずつというのが普通だったので「どういうこと?」と思いつつ買ってきて、再生したら「何これ?」みたいな。

――僕も初めてU.G MANを聴いたときの感想は、「カッコいい!」ではなく「カッコいい……のかな?」みたいな感じでした。

D 「なんでこんなに音ペラペラなの?」「なんでボーカルだけ浮いてるの?」っていう。でも、自分が音楽を作る上でも、聴いた人に「一体これはなんなんだ?」と思わせたいというか、そういう感覚は大事にしてるかもしれないです。ビジュアル系のバンドでも、インディであればあるほどサウンドのバランスが突飛に聴こえるんですよ。やけにボーカルが遠くて、やたらリバーブかかってるとか。それこそJUSTY-NASTYのメジャーデビューアルバム『CRASH』(89年)は、ギターの音が分離してペラペラなんですよ。当時のインタビューとかでも音作りには触れられていないし、そういう謎があるところにもロマンを感じるんですよね。

――それ、ちょっとわかるかもしれません。

D だから、例えばシングルバージョンの「STARDUST MELODY」(18年12月に配信で、19年5月にCDでリリース)はギターにディストーションを一切かけずに、あえてオブスキュアな感じにしてみたり。

――やっぱりあれは狙ってやってたんですね。

D はい。ちなみに去年、JUSTY-NASTYのROD(藤崎賢一)さんがやられているMETALICと共演したときに、ご本人にあのペラペラの理由をお聞きして。長年の謎が解けました。

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