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表紙はまるで雪国の「噂の真相」……!? 地元政治家と企業を狙い撃ち! 北海道・東北・北陸の政経雑誌

文=日刊サイゾー

──近年は地方紙によるスクープが注目されているが、雑誌も負けていない。例えば北海道、東北、北陸には、その地域の醜聞を取り上げる政経雑誌があり、そこでの記事は時に全国紙でも後追いされることがあるという。ただ、気になるのはそのおどろおどろしい見出し……。一体これらはどんな雑誌なのか?

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 テレビにしろ新聞にしろ、特定の地域に根ざした「ローカルメディア」はほとんどの都道府県に存在するが、その中にかつて存在した「噂の真相」のような、スキャンダルやゴシップを中心とした記事で構成される政経雑誌が、北海道、東北、北陸に数多く存在することをご存じだろうか?

 例えば「財界にいがた」という、その名の通り新潟県の書店やコンビニで販売されている雑誌では、「中原市長が『いいね!』していたSNSの中身」、福井県で発売されている「北陸政界」では、「JA大乱!発足2ヶ月で『一大クーデター劇』勃発」など地元政財界に関する記事の見出しが表紙に躍っている。さらに「北陸政界」には「不倫相手の妻に『絶対に別れない!』と言い放つ公立中女教師」といった、町内会レベルのゴシップまでもが載っている。

 これらの雑誌は記事のトーンも極めて過激で、代議士であろうが、財界人であろうが、公共団体のトップであろうが、実名を挙げて「無能」「老醜」「悪魔」などと容赦なくこき下ろしている。

 一般的に、地方ではこういった“地元の名士”たちの権力が、中央よりも強く、メディアはもちろん司法などにも露骨な圧力をかけてくるイメージがあるものの、北海道、東北、北陸の政経雑誌は遠慮なく斬り込んでいる。さらに、批判の対象となっている企業や病院などが広告を出稿していたり、代議士が「暑中お見舞」を寄せていたりと謎も多い。

 しかし、これらの雑誌は単に過激なだけでなく取材力も確かだ。地元紙の記者は次のように証言する。

「ニュース規模の大きい企業の不祥事や自治体の醜聞などが、北海道、東北、北陸の雑誌にスッパ抜かれることは多々あるため、これらは全国紙の各支局の記者はもちろん、地元紙の記者も毎号チェックしている媒体です。特に中央政界と関係のある県庁所在地の市長選や知事選、それに絡む汚職疑惑などの追及で常に報道をリードしています。

 また、地元紙のスポンサーなどになっている大手企業の不祥事などにも、果敢に斬り込むことで知られます。例えば、東京電力福島第一原発事故の影響が残る福島県の雑誌『財界ふくしま』は2019年3月号で、“ガソリンスタンドの洗車汚泥の問題”をスクープしています。『新たに浮上した福島トヨペットの“不法投棄疑惑”大熊店から排出した約“166トン”の洗車汚泥が消えた?!』と題する一連の特集は、のちに全国紙でも大きく取り上げられました」

 このような雪国版「噂の真相」ともいえよう政経雑誌の取材力はどこからくるのか? そして、なぜ北海道、東北、北陸に多いのか?

福島第一原発にヒグマ……地方政経雑誌の中身

 さて、今回紹介する雑誌は、福井県と新潟県からそれぞれ1誌、福島県からは3誌、そして北海道も3誌だが、ほかにも、例えば宮城県には「仙台経済界」(仙台経済界)という雑誌があり、秋田県や山形県には今もまだ出版されているのかどうか、その地に行かない限りはわからない媒体もある。

 そんな中から今回は代表的な8つの雑誌を取り上げていくのだが、具体的に各誌がどのような記事を掲載しているのか、直近の中から印象的だったものをピックアップしていきたい。

 まず、前出の「北陸政界」は8月号で「コロナ事変!県民をパニックに陥れた元凶『悪魔たちの性癖』」という特集を組んでいる。その内容は、3月中旬に福井県民として初めて新型コロナウイルスの感染者となった人物の行状と、その対応に“右往左往”する県知事ら、行政のトップを糾弾するものだ。感染者の素性が実名を含めて堂々と掲載されており、昨今の「ウイルスを憎んで感染者を憎まず」な風潮とは一線を画しているが、当該人物が県内有力企業の社長であったこと、そしてその人物が「発熱を自覚しておきながら福井市有数の歓楽街で飲食し、クラスターを引き起こした」ことなどを挙げて、「こうした歓楽街とは無縁の一般県民が激怒するのは当たり前で、誹謗中傷が舞い飛ぶのも致し方のない話である」と断じている……。

 続いては、冒頭でも紹介した「財界にいがた」の7月号の「『罪を憎んで…』とはならなかったJA十日町の使い込み事件」という記事。JAの子会社職員による横領を取り上げているのだが、本件は事件に伴い引責辞任した子会社の元取締役に対する、組織内の同情的な声を取り上げている点が興味深い。取材を受けた組合員は「使い込みは悪いに決まっている。だがそれを十分反省させて、因果を含めて保証人を付けるなどして更生させることもできたし、それがJAや組合員にとってプラスだったかもしれない」と語っている。外の人間からすればただの隠蔽にしか見えないかもしれないが、組織にはそれぞれいろいろな事情があるという、内部の声をすくい上げている点において、地域密着型のメディアならではともいえるだろう。

『一市民が斬る!!最高裁の黒い闇』(鹿砦社)の著者で市民ジャーナリストの志岐武彦氏も、かつて新潟県を選挙区とする森裕子議員からの訴訟や彼女の金銭問題を告発しようとするも、全国紙ではろくに相手にされなかったが、「財界にいがた」は本腰を入れて取り上げてくれたという。

「一つひとつの記事が長く、詳細に作ってくださっているのがわかります。取材力や記事を作る力が非常に高い雑誌で、私は『財界にいがた』で発信する機会をもらって非常に助かりました」(志岐氏)

 ところで、冒頭で紹介した同誌と「財界ふくしま」、後述するが、北海道には「財界さっぽろ」がある。これらは何かしらの資本関係でもあるのかと勘ぐってしまうが、「財界ふくしま」編集長の板倉崇氏は「つながりも資本関係もありません。創刊時期が似通っているのは、日本列島改造論など当時の社会背景にジャーナリスティックな雑誌を追求する人たちの存在があったから」と語る。

 そんな「財界ふくしま」以外にも、福島県を拠点にしている政経雑誌はある。そこで取り上げられるネタも原発に関連するものが多く、例えば「政経東北」の7月号は「汚染コシアブラ」について取り上げている。原発事故による放射能汚染は山林に自生する山菜にも深刻な影響を及ぼし、事故から9年以上たった今でも食品衛生法の基準値を超える放射性物質が検出されているようで、数ある山菜の中でもとりわけ汚染濃度が高いのがコシアブラなのだという。

 また、福島県には「月刊タクティクス」という雑誌もある。『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)の著者である畠山理仁氏はこの雑誌について、こう語る。

「本というよりもニュースレターというか、本屋でもアルバイト情報誌が入っているような場所に置いてあり、『この手作り感は何なんだ……』と思わせるような雰囲気。しかしながら、内容は昔の『噂の真相』を思わせる思い切った記事が多く、『ここまで書いていいのか?』と、読む側が心配になるくらいです」

 それを裏付けるかのように、5月号に掲載された「新型コロナウイルス、福島県内に猛威!二本松郵便局ではクラスター発生!郵便物が届かない事態に!」という記事では、全国紙レベルでも取り上げられた郵便局内での集団感染について詳報しているのみならず、なんと福島県内の感染者40名の年代、居住している市町村、勤務先、感染が判明した日とその経緯などをつぶさに報じている。

 他方で、福島県のように北海道にも3つの雑誌があり、そんな中からまずは「財界さっぽろ」の「鈴木直道知事と道議会・マスコミの“絶対零度な関係”」(8月号)という記事を紹介したい。鈴木知事といえば、新型コロナウイルスの対応をめぐって、若きリーダーとして脚光を浴びたことが記憶に新しい。しかしながら、記事によると“新北海道スタイル”という、いわゆるコロナ流行に伴う新しい生活様式を周知するCM制作に当たり、広告代理店との「あまりにも金額の大きすぎる」随意契約や、「自分が目立つことばかり考えている」CM内容に道議会から突き上げを喰らっているのだという。

 さらに北海道には道警の不祥事を追い続けている「北方ジャーナル」もあるが、ここでは「狩人を犯人扱い クマ出没も『撃てない』地元」(8月号)という記事を紹介したい。これは北海道砂川市からヒグマの駆除を依頼されたハンターが、警察の了解をとったにもかかわらず「建物に向かって撃った」という疑いで銃所持許可を取り消された問題について詳報している。現在はクマの発情期で、ヒグマの目撃が相次いでいるにもかかわらず、ハンターたちは「撃ったら警察に何されるかわからない」と、誰も引き金を引けない状態が続いており、「いよいよになったら罠で獲って、檻のまんま道警本部の前まで届けてあげようか」と述べる者も……。北海道ならではの問題である。

 最後は“道民雑誌”として知られる「月刊クォリティ」の「コロナに負けるな!すすきの復活祭」(8月号)を取り上げたい。同誌では毎年“夏のすすきの特集”が行われているようで、コロナ禍にある今年も懸命に頑張るすすきのの現在を伝えている。その内容は、「ゴルフバー」や「ボードゲームバー」、「下ネタバー」といった個性的な店の紹介から、水商売の女性のパパ活事情や再就職支援、助成金の振り分け方に対するすすきの観光協会への抗議、果てはアンジャッシュ渡部の騒動に絡めた「多目的トイレの使い方」など、硬軟織り交ぜた読みごたえのある特集となっている。

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