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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.645

ドイツ市民600万人を虐殺する実録報復ドラマ! ユダヤ人が結成したナチ狩り部隊『復讐者たち』

真実に目を背けようとする平穏な社会

ドイツ市民600万人を虐殺する実録報復ドラマ! ユダヤ人が結成したナチ狩り部隊『復讐者たち』の画像3
強制収容所からの決死の脱出劇を描いた『アウシュヴィッツ・レポート』

 ユダヤ人は強制収容所で、黙って殺されるのを待っていただけだったのか? この問いに対するもうひとつの実録ホロコーストものが、スロバキア映画『アウシュヴィッツ・レポート』(英題『The Auschwitz Report』)だ。ナチスドイツ占領下のポーランド、隣国スロバキアとの国境近くに「アウシュヴィッツ=ビルケナウ強制収容所」は建てられていた。絶滅収容所として知られることになるこの施設にいた2人のユダヤ系スロバキア人は、厳しい監視の目を潜り抜け、脱走を試みる。

 このまま黙っていれば、強制収容所でみんな殺されるのをただ待つだけ。誰かが収容所で起きている事実を、世界に向けて訴えなくてはならない。でも、脱走がバレれば、捕まった脱走者だけでなく、脱走を見逃した同じ棟の収容者たちも無事ではいられない。同胞たちを犠牲にする覚悟で、アルフレート(ノエル・ツツォル)とヴァルター(ペテン・オンドレイチカ)はスロバキアとの国境を目指すことになる。2人の脱走方法は、とてもシンプルかつ灯台下暗し的な発想で驚かせられる。

 ボロボロになりながらも脱走に成功した2人のユダヤ人は、強制収容所内で起きている大量殺戮を告発するものの、外部の人間たちの反応は鈍かった。罪のないユダヤ人数百万人が虐殺されているとは、にわかには信じがたい。「証拠は持っていないのか?」と、疑われてしまう。人間は自分たちにとって都合のいい事実しか、認めようとはしない。

 真実を知ることは恐ろしい。人間の本性を暴くと、どこまでも深く、ドス黒い闇が広がる。だが、真実に目を背け、知らんぷりしてしまう人間社会のほうが、さらにずっと恐ろしい。『復讐者たち』と『アウシュヴィッツ・レポート』という映画は、そのことを教えてくれる。

『復讐者たち』
監督・脚本/ドロン・パズ、ヨアヴ・パズ
出演/アウグスト・ディール、シルヴィア・フークス、マイケル・アローニ、イーシャイ・ゴーラン
配給/アルバトロス・フィルム 7月23日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国ロードショー
(c)2020 Getaway Pictures GmbH & Jooyaa Film GmbH, UCM United Channels Movies, Phiphen Pictures, cine plus, Bayerischer Rundfunk, Sky, ARTE
https://fukushu0723.com

『アウシュヴィッツ・レポート』
監督・脚本/ペテル・ベブヤク 共同脚本/トマーシュ・ボンビク
出演/ノエル・ツツォル、ペテル・オンドレイチカ、ジョン・ハナー
配給/STARA CHANNEL MOVIES PG12  7月30日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
(c)D.N.A., s.r.o., Evolution Films, s.r.o., Ostlicht Filmproduktion GmbH, Rozhlas a televizia Slovenska, Ceska televise 2021
https://auschwitz-report.com

最終更新:2021/07/23 20:00
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