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稲田豊史の「さよならシネマ 〜この映画のココだけ言いたい〜」

『川っぺりムコリッタ』、一見スローライフ映画から漂う死の香り

文=稲田豊史(いなだ・とよし)

炊きたてご飯に吐き気がする

『川っぺりムコリッタ』、一見スローライフ映画に同居する「鮮―生」と「腐―死」の画像5
© 2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会

「鮮」に具象化された「生」と、「腐」に具象化された「死」。その二者が実は隣り合わせであることに気づくと、映画内のあちこちで点がいく。

 溝口の商売は墓石の訪問販売であり、島田の友人として坊主が登場する。山田は2年前に亡くなったはずのムコリッタの元住人・岡本さんが水撒きしているのを目撃してしまう。3人とも、生と死の近接を象徴する人物として配置されている。

 また、大家の南は山田にしれっとものすごいことを言う。

「苦手なのよ、妊婦。あの大きな腹見ると、つい蹴りたくなるの」

 南いわく、妊婦は人間の中にもうひとり違う人間がいる。これはすごく動物的であり、妊婦を見ることで人間が動物的であることが思い出されるから、生理的に気持ち悪いのだと。

『川っぺりムコリッタ』、一見スローライフ映画に同居する「鮮―生」と「腐―死」の画像6
© 2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会

「生」の創造を担う存在である妊婦に対して、はっきりと生理的嫌悪感を示す南。しかしその一方、南はムコリッタの住人たちと疑似家族さながらに食を囲み、それはそれで「生」の幸せを満喫しているようにも見える。

 また、「炊きたてご飯の香りを胸いっぱいに吸い込む山田」のシーンはいかにも幸せの象徴だが、その香りに吐き気を催す人も世の中にはいる。そう、つわりに悩まされる妊婦(の一部)だ。

 川っぺりには廃棄された電化製品や家具が、うずたかいゴミの山となっている。かつて使われていたが今は使われなくなったもの、つまり「モノの死体置き場」だ。その傍らでは墓石屋・溝口の息子が、まるで天上の音楽のごとくピアニカを吹き鳴らしている。

 鮮と腐、生と死は隣り合わせ、なんなら同居しているのかもしれない。仏教における生死一如(しょうじいちにょ)、生と死は分けることができない――というやつだ。ちなみに「ムコリッタ(牟呼栗多)」とは仏教における時間の単位のひとつ(30分の1日)だそうだ。

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