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宮崎駿らから影響を受けた『秘密の森の、その向こう』の「仏実写版ジブリ」的魅力

「宮崎駿監督ならどうする?」と自分自身に問いかけた理由

宮崎駿らから影響を受けた『秘密の森の、その向こう』の「仏実写版ジブリ」的魅力の画像3
C) 2021 Lilies Films / France 3 Cinéma

 10代の頃から宮崎駿監督作品を映画館で観ていたというシアマ監督は、撮影中に方向性を見失った時、自分自身に「宮崎駿監督ならどうする?」と問いかけた上で、「いつも子どもたちが好きだと思う方を選んだ」と語っている。

 そう選択し続けた理由は、「子どもが映画やドラマを見る時、私たち大人のように文化的背景や歴史的背景にとらわれない」「子どもは今現在の感覚だけで見るから、新しいアイディアや物語に反応する」と考えたことなのだそうだ。つまりは「子どもが子どもを観る視点」で映画を作り上げた、ということなのだろう。

 それも確かに、子どもが登場する宮崎駿監督作品に通ずる要素だろう。例えば『となりのトトロ』の、お姉さんとして「ちゃんとしようとしている」サツキや、無邪気だけど「しっかりと意志を持つ」メイの姿からは、子どもの考えや行動を甘く見ていない、宮崎駿監督の真摯な姿勢がうかがい知れるのだから。

『おおかみこどもの雨と雪』との共通点

宮崎駿らから影響を受けた『秘密の森の、その向こう』の「仏実写版ジブリ」的魅力の画像4
C) 2021 Lilies Films / France 3 Cinéma

 さらに、シアマ監督はインスピレーションを与えた映画として、細田守監督作品の『おおかみこどもの雨と雪』(2012)を挙げている。確かに「ファンタジー要素をもって、子ども2人の関係と成長、さらに母親との関係を綴っていく」ことは、『秘密の森の、その向こう』に通ずる要素だ。

 シアマ監督が『おおかみこどもの雨と雪』を大好きな理由は「子どもが解放されていく」「家族に対する感謝などを丁寧に描いている」ことなのだそう。これを受けて、細田守監督は「光栄に思います。拝見しながら『未来のミライ』(2018)も連想しました」「彼女の映画から、僕も新しい映画へのインスピレーションを受けたいと思います」などと、公式のコメントを寄せていたりもするのだ。

子どもの自然体の姿を映し出せた理由なのかもしれない

 『秘密の森の、その向こう』における、宮崎駿監督や細田守監督作品からの影響は、おそらく子どもの「演技をしていると思えないほどの自然体の姿」の演出にも生かされているのではないか。そこに「大人が思う文化的背景や歴史的背景などが全く見えない」「純粋な子どもだけの世界」があることにも、感動があったのだから。

 シアマ監督は、新たな場所で男の子として過ごそうとする10歳の主人公を描く『トムボーイ』(2011)や、脚本で参加した孤児院で暮らす少年少女を描いたストップモーションアニメ映画『ぼくの名前はズッキーニ』(2016)でも、子どもの心を繊細に描いており、今回もその手腕が見事に発揮されていたとも言えるだろう。

宮崎駿らから影響を受けた『秘密の森の、その向こう』の「仏実写版ジブリ」的魅力の画像5
C) 2021 Lilies Films / France 3 Cinéma

 余談だが、『秘密の森の、その向こう』の主人公のネリーと、少女時代の母マリオンは、実際に双子の姉妹が演じていたりする。そのあまりのそっくりさに混乱してしまいそうにもなるが、「主人公ネリーの服が青」「母マリオンの服が赤」と認識しておくとわかりやすいだろう。

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