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『ねほりんぱほりん』労働者の手配から覚醒剤の運搬まで 「手配師」は闇キャリアをどう積む?

「運び屋」に採用されるのは、即答した人のみ

 繰り返すが、マサヒコさんの任務は「仲介役」だ。では、「運び屋」の人材はどうやって見つけてくるのか?

「パチンコ屋さんでしきりに負けて、お金をおろしに行って、また来て、負けて……みたいな人の隣に行って『どうっすかね。出てます?』みたいな」(マサヒコさん)

 パチンコ屋でターゲットを見定め、フレンドリーに接し、そこから食事に誘うらしい。つまり、ダメ人間にロックオンするのだ。そこから「自分、こんな仕事をしてるんですけど、ちょっと手伝ってもらえますか?」と、探りを入れつつ切り出す。

「『3泊5日でこういうところ行ってくれたら、50万ぐらい払えるんだけど』って。すぐ乗っかってくる人限定です。そこで考える人間は、もう面接落ちですね。即答のみ。変なリスクとかより、『金!』っていう人だけをチョイス」(マサヒコさん)

 繰り返すが、覚醒剤の密輸で捕まると死刑になる国もある。だからこそ、目先のお金に目が眩むタイプ……すなわち、後先考えないイケイケドンドンの人材のみを雇うわけだ。「3泊しただけで50万円あげる」と言われたら、その時点で普通は怪しむはずだし……。

 番組は、過去に「運び屋」をやったことのある経験者・マヤさん(30代)にも話を伺っていた。

「昔、働いてたキャバクラの黒服さんから、何年ぶりかに電話があって。『大事な書類とか(海外から)運べる人がいないか?』みたいな。2泊3日で、報酬は30万円」

「旅行がてら、お小遣いをもらえるなら『私が行ってくる』みたいな」(マヤさん)

 なぜ、この条件で大丈夫だと思ったのだろうか……? そこで疑うのは当然なのだけど、疑わないタイプだからこそ彼女は選ばれてしまったのだろう。

「(現地で)30代半ばぐらいの白人さんに、無言で黒いスーツケースを渡されて」

「『何か入ってるかな?』と思って、ちょこっとファスナーを開けてみたんだけど、洋服が上にたんまり入っている。他人の荷物だと思ってたから、下まで探ったりはしてなくて」(マヤさん)

 もう、すでに話が何カ所も破綻している。そもそも、「大事な書類」という話じゃなかったっけ!? “雇う側”が悪人なのは大前提として、“受ける”側も何も考えてなさすぎだ。

兎にも角にも、そのスーツケースを持ってマヤさんは空港に向かった。そして、そのスーツケースは手荷物検査で引っかかってしまった。即、職員に連れて行かれたマヤさん。

「ひたすら待たされて、呼ばれた頃にはスーツケースが壊されていて。白い粉が出されてる状態でした。薬物に対する関心がなかったので現物も見たことがないし、『なんだろう?』って感じだったかなあ」(マヤさん)

いや、現物は誰だって見たことないよ! 「なんだろう?」という戸惑いも、リアクションとして呑気すぎる。

そもそも、空港で他人の荷物を受け取るのは、運び屋にさせられる流れの典型である。観光客のスーツケースが盗難に遭い、ツアーガイドから代用のスーツケースを手渡され、観光客が持ち込もうとするとそこにヘロインが隠されていた「メルボルン事件」は、この手の事件の代表例だ。つまり、どんな人からも荷物を受け取ってはならないということ。

 さて、その後のマヤさんはどうなったのか?

「(その後は)もう、留置所じゃないですかね。1番、あのときが怖かったなあ……。最終的には、覚醒剤の密輸で刑務所に入れられました」(マヤさん)

 不幸中の幸いだったのは、捕まったのが日本だったという点だ。だから今、こうして娑婆で話せている。発見されたのが海外だったなら、今もまだ彼女は帰ってこれていないはずだ。

運び屋本人は何を運んでいるか知らないのに、税関で引っ掛かり、そして死刑になってしまうケースは少なくない。割に合わないどころの話じゃない。しかも、仲介役からしたら「弾の1つが外れた」程度の結果である。彼らは、ほぼノーダメージなのだ。“人を使う側”と“人に使われる側”の格差を思うと、悲しくなってくる。

 現在、この手の流れで犯罪に巻き込まれるケースとして、「運び屋」以上に「オレオレ詐欺の受け子」が多い気がする。あと、マサヒコさんはパチンコ屋で直接声をかけていたようだが、今はもうそんなアナログじゃない。SNSを通じたスカウト行為が幅を利かせているように思うのだ。

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