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『ねほりんぱほりん』労働者の手配から覚醒剤の運搬まで 「手配師」は闇キャリアをどう積む?

手配師時代に味わった“ドキドキ感”に、まだ未練が?

 その後、仲間の逮捕をきっかけにマサヒコさんの違法行為は警察に知られてしまう。そして、彼は刑務所に入った。

 そりゃそうか……。これだけのことをしてきたのだ。さすがに、服役を済ましていないとテレビには出られなかったはずである。

山里 「捕まったときは、どういう思いでしたか?」

マサヒコ 「『ああ、終わったな』っていう。『もう、いいや』と。ちょっとホッとしてました、変な言い方ですけど。『ああ、捕まったな』と」

 麻薬中毒者が捕まったときも、「ホッとした」と思うそうだ。スリルジャンキーだった彼も、同じ感情だったらしい。

 加えて、マサヒコさんには改心するきっかけがあった。子どもの存在である。

マサヒコ 「息子も、ちょっとやんちゃで。でも、やっと高校も決まって。で、(中学校の)卒業式の3日前ぐらいに(自分は)捕まったんですけど」

YOU 「(刑務所に)入ってるときは、心配だったでしょう?」

マサヒコ 「(パパ友の)タカちゃんがずっと(見てくれて)。タカちゃんはわかってるんですよね。仕事を紹介してる人間のことだから、『あいつ、捕まったよ』って連絡が来るんで、息子の卒業式の準備も全部してくれて、(刑務所への)差し入れに卒業式の写真も入れてくれて」

 さすが、若頭補佐である。やはり、面倒見がいい……いや、そんな単純な話ではないはずだ。マサヒコさんが捕まれば、タカちゃんが捕まるリスクも自ずと高くなる。彼だって、芋づる式に捕まりたくはないだろう。だから、マサヒコさんが最も望むことをしてあげた。息子の世話をすることで、自分の身の安全を守る……という目算があったと思うのだ。

山里 「(卒業式の)写真を見たとき、どうでした?」

マサヒコ 「『うわぁ、(式に)出たかったなあ』っていう(苦笑)。そのときしか見れないときがあるじゃないですか、子どもの成長の中で。でも、そこで自分は何年か欠落してるんです。自分はもっとしてやりたかった、子どもに、本当は」

 切ないBGMを流し、家族愛を込めたいい話風にまとめようとする番組の演出が気になる。正直、見ていてビタイチ気分が乗らなかったのだ。いい話でもなんでもない。こういう仕事をする人間が、人並みの幸せを望むのは違うと思うのだ。この結果は、単純に因果報応である。

 その後、出所したマサヒコさん。現在、彼はどういう人生を歩んでいるのか?

「(刑務所を)出てからは福祉の学校を通って、国家資格を取って、今は知り合いのツテで、昔の自分みたいな人が社会復帰したときの施設で働いています。自立や定着支援をしています」(マサヒコさん)

 とんでもない話の連続だったのに、意外ときちんとした結末へ着地した今回。なんだかんだ、マサヒコさんは人脈が豊富だ。逮捕前に培ったコネのお陰で、彼はちゃんと社会復帰できたと思うのだ。

YOU 「マサヒコさんが現役のときに感じてた“ドキドキ感”とか、そういう感情は今はもうまったく求めないですか?」

マサヒコ 「……う~ん、まあそうですね。今は、普通がいいのかなっていう。その頃(手配師の頃)は、今日と明日はまったく違ってた。前は“当たり前”が窮屈だったんですけど。サラリーマンをしていると、(日々が)だいたい一緒じゃないですか? でも、“当たり前”っていいんだなっていう」

 マサヒコさんからほのかに漂う、他人事っぽい雰囲気はなんなのだろう? 手配師時代の生活に恋い焦がれる未練も、確実に伝わってきてしまった。それ以前に、「こんな人に“当たり前”を語られたくない」という感情を筆者は抱いていた。

 今回は、番組史に残るスレスレな内容だった。「手配師」、「ニンベン屋」、「覚醒剤」と、とてもEテレで放送する内容ではないようにも思った……が、よくよく考えると、こんな内容を放送できるのはNHKくらいしかない気もする。

 おそらく、これ以上に放送不可なヤバい案件と人脈を、『ねほりんぱほりん』は少なからず抱えているだろう。そう考えると、改めて世の中は広いし恐ろしい。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/11/15 20:00
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