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今週の『金曜ロードショー』を楽しむための基礎知識75

『名探偵コナン』蘭とのラブコメよりさらにたまらない灰原との…

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金曜ロードショー『天国へのカウントダウン』日本テレビ 公式サイトより

 今年の4月に公開された『名探偵コナン』の劇場用シリーズ第26作『黒鉄の魚影』のシリーズ初興行収入100億円突破を記念して9月の日本テレビ系『金曜ロードショー』は2週連続コナン祭りを実施。1週目はコナンの宿敵である‟黒づくめの組織”のジンとウォッカが映画に初登場した、劇場シリーズ5作目『天国へのカウントダウン』を放送。

 富士山を一望する巨大ツインタワーで発生した殺人事件、そして連鎖するように発生した爆破騒ぎ。背後で暗躍する黒づくめの組織……コナンたちは事件の真相を解き明かし、超高層ビルから脱出することができるのか? 超A級のパニック・サスペンス!

『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』のあらすじ

 阿笠博士と少年探偵団らが、キャンプの帰りに新築の巨大ツインタワービルを見に行くと、そこには探偵・毛利小五郎と蘭たちの姿が。大企業TOKIWAの社長にしてビルのオーナー常盤美緒は小五郎の大学の後輩で、オープン記念のパーティ前に招待を受けていたのだ。

 これ幸いと小五郎らに交じってA棟の最上階についたコナンたちは富士山を一望できるパーティ会場の光景に目を奪われる。会場にはパーティに出席する面々がそろっていた。ツインタワー建設に貢献した市議会議員の大木、ビルを設計した建築家の風間、日本絵画の巨匠で美緒の絵の師匠・如月峰水、TOKIWAの社長秘書沢口、プログラマーの原、彼らを紹介される中、コナンは従業員の会話からビルの前に不審な車ポルシェ356Aが止まっていると聞かされる。それは黒づくめの組織のメンバー、ジンの愛車だ。

 組織とビルの間にどのような関係があるのか、訝しがるコナン。その夜、ビルのスイートルームに宿泊していた大木議員が何者かに殺される。死体のそばには割られたお猪口が残されていた。

 コナンと少年探偵団が捜査のために容疑者らに聞き取りをする中、TOKIWAのプログラマー、原の部屋を訪れた探偵団はすでに殺されている原と、やはり割られたお猪口を目にする。これは連続殺人でなんらかのメッセージなのか?

 警察がTOKIWAの内部に事件に関係する何等かの事情があるとして、パーティの延期を要請するも美緒は予定通りパーティを開催する。

 一方、元黒の組織のメンバーで今は脱走し、正体を隠して阿笠博士の元で暮らす灰原哀が深夜、何者かに電話をかけているところを博士が目撃する。組織への寝返りを画策しているのかと疑われるが、真相はかつて組織に殺された姉が生前借りていた部屋に電話をかけ「声が聴きたかったから」と10秒ほどの留守電の声とやり取りをしていただけだった。

「私には居場所なんかない」と孤独感に苛まれる灰原に、コナンや少年探偵団らは「ひとりじゃない、居場所はあるよ」と告げるのだった。

 だがその頃、留守電に残されたメッセージからツインタワービルのパーティ会場に逃亡者・灰原が姿を現すことを、ジンたちが知ってしまう。

 そんなことは露程も知らないコナン、灰原らはパーティ会場へ。そしてあらたな殺人事件が発生する。さらにジンたちが仕掛けた爆弾がビルの電源を破壊する。パーティの参加者らは別電源で動くVIP用エレベーターを使って脱出を図るが、ジンが灰原を狙撃しようとしていた……。

劇場版コナン、ラブストーリーあり、笑いもありでヒットシリーズ化へ

 コナンの劇場版シリーズは現在26作品あり、『天国へのカウントダウン』は初期の傑作として語り継がれ、今も熱狂的な支持を集めている人気作。2006年に公式サイトで行われた人気投票では、当時9作品の中から1位に選ばれた。2016年の人気投票では4位に輝いた。

 劇場版シリーズは初期からと中期以降の作品で、方向性が微妙に変化している。初期のころは密室劇を使った本格ミステリー風やパニック映画の要素が取り入れられていたが、レギュラーキャラが増えていった中期以降は「あのキャラクターがついに登場!」といった具合に人気キャラクターの登場や、キャラクター同士が対峙、対決するという部分がフィーチャーされていくようになる。それと同時に、興行成績も右肩上がりになっていく。

 当初は20~30億円台にとどまっていた興行成績は、キャラクター人気を押し出していくとともに40億円を突破、20周年記念として製作された『純黒の悪夢』は黒づくめの組織とFBIが初対決する作品で、前作の興行成績を20億円以上、上回る63億円となり、以後は「100億越え」を目標にしていく。

『天国へのカウントダウン』は、新しい方向性に達していく以前の名残を残している作品だ。

 それまではボーイフレンドである新一の帰りを待ちながら、コナンがその正体であることに気づかない毛利蘭とのイチャイチャラブコメが多かったが、その代わりに少年探偵団のメンバーとコナン、灰原を巡る淡いラブストーリーが象徴的に描かれた。

 毎回コナンと蘭のラブコメ描写に気恥ずかしさを感じながら見ていたのに、今回はもっと恥ずかしいやつがあるじゃないか!

 クライマックスで歩美が「コナンの心臓音でカウントダウンが正確にできた」という展開は、顔から火が出るレベルのやつです。この辺が人気投票で上位を獲得していた理由なんだろうな……。

 灰原の孤独を少年探偵団が癒していくところも、いい描写なんだけど、もう恥ずかしくてたまらない。

 そんな気恥ずかしさを残しながら、この映画はツッコミどころも忘れない。クライマックスでジンはある人物を狙撃するんだけど、実は勘違いで別人だったんだよね。「髪型が同じだったから」という理由で。

 恐るべき腕前のスナイパーなのに、そんなことで間違うなよ! お前本当に凄腕か!? その程度で間違えるレベルだから、これまでの殺しも、色んな間違いがあったんじゃないのか!? そもそも工藤新一の口封じに失敗してるから今日の状態があるわけで。

 黒づくめの組織、あらゆる意味で恐ろしい組織であることは間違いない。

しばりやトーマス(映画ライター)

関西を中心に活動するフリーの映画面白コメンテイター。どうでもいい時事ネタを収集する企画「地下ニュースグランプリ」主催。

Twitter:@sivariyathomas

しばりやとーます

最終更新:2023/09/15 18:00
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