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「選挙に行こう」だけでは意味がない 中島岳志が考える政治の本質

政治が「自分ごと」にならない理由

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『自分ごとの政治学』(NHK出版)

──本書のタイトルは「自分ごと」という言葉が使われています。しかし、これまで多くの人々が「自分ごと」にしようとしながらも失敗してきました。いったい、なぜ、これまで政治は「自分ごと」化されてこなかったのでしょうか?

中島:例えば、政治が自分ごとになれば投票率は上がるはずですが、近年の投票率は下がり続ける一方ですよね。これは、私たちが主権者だと言われているのに、その実感が持てないからでしょう。そして、その実感のなさは大きくなっています。

 その原因のひとつが新自由主義の流れです。新自由主義は、規制緩和をしながら政府の仕事を小さくし、マーケットに任せていくという考え方です。政府が扱う領域が小さくなれば、有権者が主権を行使できる範囲は必然的に目減りしていきます。

 もちろん選挙に行くことは重要ですが、それだけでは意味がありません。主権が目減りつつある今、「選挙に行こう」というスローガンだけでは政治は自分ごとにならないんです。

──選挙に行かないのは政治に関心がないだけでなく、主権が減っているから行く意味がなくなっている、と。

中島:今言うべきことは「選挙に行こう」だけではなく、「政治は選挙だけではない」ということではないでしょうか。日常の中には、選挙だけでなく多くの政治があります。例えば、世田谷区の保坂展人区長は、車座集会を開きながら区民の声を聞いています。さらに小さな範囲では、意見が異なる人が話し合って物事を決めるのもひとつの政治の場です。

 そうやって、選挙ではないルートで政治に関与していくことが「自分ごと」として政治を捉えていく方法のひとつ。NPOなどで空き家の利用方法を考える話し合いに参加をすれば、必ず違う意見の人と巡り会います。そして、違う意見との折り合いをつけながら最終的にみんなで合意をしていく。それは政治の本質的なプロセスです。身近な場所で行う政治に目を向けることこそが、重要なのではないかと思います。(後編に続く)

(プロフィール)
中島岳志(なかじま・たけし)
1975年大阪府生まれ。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。大阪外国語大学外国語学部地域文化学科ヒンディー語専攻卒業。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究科博士課程修了、博士(地域研究)。北海道大学大学院法学研究科准教授を経て、現職。専門は南アジア地域研究、日本思想史、政治学、歴史学。主な著書に『ナショナリズムと宗教』(春風社、日本南アジア学会賞)、『親鸞と日本主義』(新潮選書)、『ガンディーに訊け』(朝日文庫)、『保守と大東亜戦争』(集英社新書)、『自民党 価値とリスクのマトリクス』(スタンド・ブックス)、『自分ごとの政治学』(NHK出版)など多数。

萩原雄太(演出家・劇作家・ライター)

演出家・劇作家・フリーライター。演劇カンパニー「かもめマシーン」主宰。舞台芸術を中心に、アート、カルチャー系の記事を執筆。

Twitter:@hgwryt

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はぎわらゆうた

最終更新:2021/02/09 16:00
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