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岸田文雄政権を壊す“疑惑の総合商社”甘利幹事長と短命政権への道

岸田が“学んだ”開成高校野球部

 ところで、野球といえば、この人も元野球少年だった。

 進学校として有名な開成高校の野球部で、レギュラーとして2塁を守っていたのが岸田文雄新総理である。

 高橋秀実のノンフィクション『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』(新潮文庫)には、いかにも弱いと思われている開成高校野球部には、勝つための独特の理論が存在していて、それが「弱者の兵法」だと書いてあるそうだ。

「弱者の兵法、下手の矜持というべきか。上手くなって勝とうとするのではなく、下手は下手で勝つのだ」

 岸田は自著『岸田ビジョン』の中で、「野球から学んだことが大いに役立っています」と書いているそうだから、総理にまで駆け上がってきたバックボーンにこうした考えがあるのだろう。

 高橋に新潮がインタビューしている。そこで高橋は、開成の野球部員は言葉の使い方に気を遣い、守備でも球が“来た”のか、“来る”のかで、来たという過去形では球も過ぎ去り取り損なうが、来ると思えば構える時間が生まれ、補給する確率が上がると語っている。

「岸田さんも就任直後の記者会見で『私、が、目指すのは』と『が』を強調したり、『多様性を尊重される』を『多様性が尊重される』と言い直していました。助詞へのこだわり。助詞ひとつで認識も大きく変わるというのが開成野球部のセオリーなんです」

 さすがに頭のいい高校生が集まった野球部だから、「来た球を無心で打て」などという単純な長嶋茂雄セオリーとはまったく違う。岸田も東大に3度落ちて、不本意な早稲田大学に入ったが、気分は東大卒なのかもしれない。

 だが、政治家に最も大切なのは、助詞よりもしゃべった中身、内容であるはずだ。菅前総理よりもはるかにスマートで滑舌もいいが、内容に新鮮味がない、何をやりたいのか具体的な中身がわからないという不満が早々と出ている。

 そのため、総理就任後には必ずある「御祝儀相場」がないのは、岸田にとって大誤算だろう。

 支持率の最低が朝日新聞の45%、最高が日経の59%だから、菅内閣発足時より15~20%下回ってしまった。

 安倍晋三元総理の傀儡政権だということが見え見えなところに、“疑惑の専門商社”である甘利明を幹事長にしたことで、すっかり国民の期待感はしぼんでしまった。

 以前、都市再生機構(UR)との補償交渉で、甘利や秘書たちが建設会社側から口利きの見返りに金銭を受け取っていたと報じた文春は、「待ってました」と、この疑惑の再追及を始めた。

 詳しい話は以前書いたのでここでは書かないが、おおよそこんな話である。2013年当時、URが進めていた道路工事で、予定地と隣接する建設会社との間でトラブルが起きていた。その会社の総務担当をしていたのが一色武で、交渉を好転させるために甘利の公設第一秘書だった清島健一を頼った。

 そのおかげでURから補償金約2億2000万円を得ることができ、その際、清島にお礼として500万円、その3カ月後に甘利の大臣室を訪ねて、甘利に現金50万円を手渡したという。

 その後、新たなトラブルが両社の間で起こり、UR側に30億円規模の補償を求めることになった。一色側は再び甘利を訪ね、トラブルの説明をしてから50万円を渡したそうだ。

 だが、甘利の秘書たちは次第に事をうやむやにしようとしてきたため、一色は「自らが贈賄側として捜査対象になり得るリスクを冒してまで、録音データやメモなど全ての資料を(文春側に=筆者注)提供したのだ」(文春)。一色が清島に喫茶店で現金20万円を渡す現場も隠し撮りした。

 文春の報道後に甘利は経済再生相を辞任したが、結局、東京地検特捜部は甘利と秘書たちを不起訴処分にしてしまった。その裏には、当時「官邸の守護神」といわれていた黒川弘務法務省官房長の存在があったのではないかともいわれている。

 今回、甘利は幹事長という要職に就いた。就任会見でこの件を聞かれた甘利は、「私はこの事件に関して事情を全く知らされていない」「寝耳に水だった」と述べている。

 だが文春は、清島元秘書のこのような「証言」を掲載している。

――甘利氏は二回、五十万円を受け取った。
「はいはいはい」
――甘利氏が何も知らないということはないのでは?
「ああ、ゼロか百かと言えば、二十くらいみたいな……でも、政治のことは見ないようにしていますので」

 野党側も、この“事件”を再調査するといい出している。岸田は「御祝儀相場」のあるうちに解散・総選挙に持ち込もうとしているが、その目算は音を立てて崩れ始めている。

 政治下手が、人事でヘタをうち、解散の時期を見誤り、国民からそっぽを向かれる。

 岸田総理が目指すのは政界の大谷翔平かもしれないが、斎藤佑樹には失礼だが、彼と同じ道を歩む可能性が高いと見た。

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