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TARO SOUL、生粋のブランニューソウル男が到達した“あるべき”姿

父となって音楽観に変化が生じた。

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cherry chill will.

――具体的に“新しい何か”というのは?

TARO 純粋に“常に味方”がいる自信、っていうんですかね。結婚して子どもができたとき、音楽的にはどん底だったんです。「音楽=人生」のはずだったのに、思うように活動はできないし作品もリリースできない。でも、家に帰るとめっちゃ幸せなんです。精神面のアンバランス感というか、ストラグルしようにも家に帰ったらハッピーなので、毎日その感覚に苛まれていた。もし家族もなくひとりであれば、その孤独感をリリックに落とし込めたかもしれないんですけど、今回はそのバランス的に傾いていた天秤を修正する作業でもありました。

――父となって音楽観に変化が生じたと。

TARO まだ手探りなんですけどね。音楽で稼ぐことも大事だけど、父親として恥ずかしくない、真剣に向き合って心血を注いでる姿を子どもたちに見せたい、という気持ちが生まれました。そんな父親の姿を見せていれば、子どもたちも真剣に何かと向き合ってくれるんじゃないかなって。去年の1月だったかな、まだ新型コロナが感染拡大する前、保育園の園長先生から「園でライブをしませんか?」って声をかけてもらったことがあったんです。「子どもにもウケる曲を作ろう!」とかいやらしい考えではなく、もっと多くの人に喜んでもらえるような曲を作りたい、という気持ちに拍車がかかったんですよね。それこそ、その歌だけでも一生歌っていけるような曲を。

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――今作の楽曲のビートはすべてTARO SOULがプロデュースし、そこにSHIMIをアレンジャーとして起用しています。SHIMIといえば、プロデューサーチーム〈BUZZER BEATS〉のメンバーであり、TARO SOULの作品も多く手がけてきた、公私共に交流のあるプロデューサー/レコーディング・エンジニアです。というわけで、SHIMIにも話を聞きたいのですが、今作への参加のきっかけから教えてください。

SHIMI 純粋にひとりのプロデューサーと手を組んだほうがタロちゃん的にはやりやすいんじゃないかな、という思いからです。当初はタロちゃんからデモのビートをたくさん聞かせてもらっていて、「(曲は)いっぱい作っておきなよ!」とか無責任に煽っていたんですが、結果的に「一緒にアルバムをやろう」という流れに落ち着きました。

TARO SHIMIとはもう15年来の付き合いで、SHINGO☆西成さんの「GREAT MUSIC」(06年)に僕がフィーチャリングで参加したのが、一番最初にSHIMIと仕事をした曲……になるのかな?

SHIMI タロちゃんとは気がつけば何曲やったんだろう、というくらい、ビジネスもプライベートでも仲良くさせてもらっています。

――戦友でもあり親友でもあるSHIMIだからこそ、TARO SOULの“ようやく1枚目”でもある『Got A Brand New Bag』について語ってもらいたいんですが、プロデューサー目線でジャッジするTARO SOULのビートメイカーとしてのスキルというのは?

SHIMI 初めてにしてはちゃんとできてるなと思いました。ただ、気に入る曲のパターンが一緒で、幅が狭い。基本サンプリングで、ずっとドラムとハットがチキチキいってるようなトラックばかりを作る傾向で(笑)。でも、ラッパーは誰かが作ったトラックを待つより、自分でビートを作り、ラップを乗せながら試行錯誤していったほうが生産的ではあると思うんですよね。別にフル尺じゃなくてもいいわけですから。

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――アレンジャーとして参加する上で、TAROには直接伝えていないが「TARO SOULをこんなふうに見せられたら」という裏テーマのようなものはありましたか?

SHIMI 基本、タロちゃんはハードルを高く設定しがちなんですね。「みんなが納得しない曲じゃないと世に出せない!」と背負ってしまう真面目な子なので、個人的にはあまり難しく考えず、ノリやヴァイブスを重視して、それをそのまま出してしまえばいいんじゃない? という気持ちで支えさせてもらいました。彼がヒップホップを愛していること、歌がうまいということは、聴く者すべてがわかっていることなので、そこまでヒップホップを貫き通すことに注力せず、タロちゃんが過剰に足し算をしないよう、僕は“引き算”を意識した、というのがテーマだったかもしれません。

TARO まさにそんな感じのディレクションだったね。例えば、僕が100を目指そうとしたら、SHIMIは80にしてくれる感じ。

――実際は「TARO SOULは120を目指しすぎるので、SHIMIが100にする作業」という感じだったのかもしれませんね。

TARO そうかも。実際に良いものが削ぎ落とされている感じはまったくしなかったので……というか、手癖なのか、どうしてもやりたいことを全部詰め込んでしまいたくなるので、自分ではどこがトゥーマッチか判断できなくなるときがあるんですよ。

SHIMI 僕は波形を動かしただけですけどね(笑)。

TARO いや、(アルバム収録曲の)「Designer」はBPMをかなり下げて歌い方のリファレンスも送られてきたり、「Never Too Late」はドラムプログラミングとキーを変更させられたり、結構ガッツリディレクションされたよ。

SHIMI リクエストしても引かない場面もありましたけどね(笑)。ただ、僕はどうしても音的に解析してしまうので、リリックの内容は二の次になってしまうところがあるんです。そこはタロちゃんのリリックが伝わりづらくなる、整合性が取れなくなってしまうのであれば、それは意見を尊重しよう、といったやりとりは結構ありましたね。

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