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クリストファー・ノーランがコロナ禍の劇場に闘魂注入! 2020年この映画がすごかった3選

アンディ・ラウで香港壊滅! 『ホワイトストーム』

クリストファー・ノーランがコロナ禍の劇場に闘魂注入! 2020年この映画がすごかった3選の画像4
『ホワイトストーム』公式サイトより

 現在、香港映画は苦境も苦境です(そもそも映画どころじゃない現実もあるわけで)。厳しい検閲によって、少なくとも昔の香港映画のような「面白ければ何やってもいいんじゃ!」という時代は終わったと言えます。寂しい今日この頃ですが、それでも香港で大暴れしている俳優がいます。それこそがスーパースター、劉徳華ことアンディ・ラウ。御年59歳と還暦間近ながら、今なおアクション超大作で主演を張っている傑物です。

 西にトム・クルーズがいるなら、東にアンディあり。私生活ではマフィアに脅迫されたり(マネージャーの家が放火される、本人も銃を突きつけられるなど)、ストーカーに付け狙われたり、最近でも落馬事故で重傷を負った苦労人です。そんなアンディですが、今年は2本も主演作が日本公開されています。今回ご紹介したいのは、その中の1本『ホワイトストーム』(本国公開は2019年)。

 これが往年の「面白ければ何やってもいいんじゃ!」マインドに溢れた傑作でした。麻薬で人生が狂っていく男たちを描いた大河ドラマなんですが、ハッタリにまみれた展開がたまりません。クライマックスの人が行き交う地下鉄の駅構内を車が爆走する怒涛のカーチェイスは必見です。まだまだ香港映画の火は消させねぇという意地を感じる1本でした。

 ちなみに、近年アンディのアクション映画では香港の街が破壊されまくっています。最新作『SHOCK WAVE2(原題)』(2020年)でも核爆弾が爆発して、空港らしき場所が吹っ飛んでました。宇宙人とか怪獣が来ないと壊れないレベルで街が吹っ飛んでいるのですが、それを1人の人間がやっているのが特筆に値します。

 一応は「犯罪者を倒すため」という名目はあるのですが、ことごとく必要以上に被害が出ているのは、ある種の皮肉のように思えてなりません。香港の自由は今や風前の灯火ですが、アンディは香港映画のマインドを死守し、そして殉じようとしているのでしょう。表現の自由を身をもって示し続ける男アンディ・ラウ、彼の主演作は今後も要チェックです。

 映画館も、配信サイトも、国も、すべては今この瞬間も変化し続けています。そして、とてもじゃないですか明るい時代とも言えません。解決すべき社会問題も山積しており、それらから目を逸らして「こんな時だからこそ、あえて映画で楽しく!」と言うのも無責任に思えます。しかし、それはそれとして、注目すべき映画はたくさん存在するのも事実なわけで。世間にはつらいこともあれば、楽しいこともあるもの。その両方を認識しつつ、程よく苦しみ、程よく楽しみながら、大コロナ時代a.k.a.2021年を生き残っていこうと思います。

加藤よしき(ライター)

ライター。1986年生まれ。「Real sound」「tayorini」などで執筆。『別冊映画秘宝 90年代狂い咲きVシネマ地獄』(洋泉社)に寄稿。

Twitter:@DAITOTETSUGEN

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かとうよしき

最終更新:2020/12/29 12:00
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